Alisa Freedman “Publishing in Academic Journals” (2022) の全訳を掲載します

Alisa Freedman “Publishing in Academic Journals” (2022) の全訳を掲載します

2022年9月、Front Runner Series: 多言語論文執筆セミナー Vol. 10にご登壇いただいたアリサ・フリードマン先生(オレゴン大学)による記事が、U.S.-Japan Women’s Journal誌に掲載されたことをお伝えいたしました。

Alisa Freedmanさんの執筆記事がU.S.-Japan Women’s Journal誌に掲載されました
この度、Front Runner Series: 多言語論文執筆セミナー Vol. 10のスピーカーであるAlisa Freedmanさん(オレゴン大学)が執筆…
historiansworkshop.org

このたび、フリードマン先生のご厚意により、その全文を日本語に訳出し、歴史家ワークショップウェブサイトにて公開する許可をいただきましたので、以下に掲載します。訳出は森江建斗さん(京都大学)が担当し、監訳を藤本大士さん(学振PD・京都大学)が担当しました。公開をご快諾くださったフリードマン先生、また翻訳を担当した森江さん、藤本さんにこの場を借りてお礼申し上げます。

A pragmatic how-to guide for navigating the journal publishing process, from submission to publication, what to expect and when, and who does what.
muse.jhu.edu
原文はこちら

学術誌で論文を出版する――『日米女性ジャーナル』編集長からの専門的助言

アリサ・フリードマン *1

Freedman, Alisa. “Publishing in Academic Journals: Pro Tips from U.S.-Japan Women’s Journal,” in “Celebrating 60+ Issues of U.S.-Japan Women’s Journal,” digital-only special issue, U.S.-Japan Women’s Journal (2022): 6-13. doi:10.1353/jwj.2022.0014.

本稿は、学術誌での論文出版プロセスを進めていくための実用的な手引書であり、論文の投稿から出版にかけて、どのような過程を経て、いつ誰が何をするのかを説明している *2 。本稿は雑誌論文の書き方よりも、出版する方法に重点を置くこととする。筆者は『日米女性ジャーナル』の編集長を務めた6年間(2016~2022年)で数百本の原稿を審査・編集し、85本以上の論文を出版に向けて準備してきた。その際に学んだことや質問されたことをもとに、アドバイスや「専門的助言」を提供する。さらに、学生、研究者、教員、関心を有する非専門家といった幅広い読者層に向けて、書籍、論文、翻訳を出版した筆者自身の経験も紹介する。

筆者からの提案は人文学と社会科学(とくに質的研究)に基づいているが、他の分野の研究者にとっても有用であることを願っている。本稿の実例はアメリカでの出版に基づいている。ヨーロッパでの出版は異なったプロセスを経ることがある(オープンアクセスの方針など)。日本での出版は、たいていアメリカでの出版よりもはやく進むが、査読が少ないため論文の質が厳しく管理されているわけではない。論文の出版は、多くの人が関与する多段階のプロセスである。本稿は包括的または網羅的な手引書として書こうとしたものではない。代わりに、編集者と著者の視点から、実践的なアドバイスと学術誌出版プロセスの舞台裏を紹介したものとなっているよう願っている。

2種類の雑誌——「査読付き」と「査読なし」

査読付き

査読付き出版物とは?
査読(ピアレビュー)とは、原稿を提出し、「同業者」(多くの場合、出版・指導をしたことがある経験豊富な研究者)による「審査」を受けることである。査読者は、原稿が適切な研究の体裁を有しているか、研究内容が適切に提示されているか、出版されるにふさわしいか、独自の学術的貢献があるかどうかを評価する。査読付き出版物の例としては、査読付き学術誌の論文、学術出版社から出版された書籍、編著本の章、読みやすさと正確さを専門家によって評価された文学作品の翻訳などがあるが、これらに限らない。査読付き学術誌は通常、一定の間隔(たとえば、年に1回や2回)で発行され、随時原稿を受け付けている。

査読の種類
慣例的に、査読付き学術誌は「シングルブラインド」または「ダブルブラインド」査読を採用している。「シングルブラインド」査読とは、査読者は著者が誰かを知っているが、著者は査読者が誰かを知らないことを意味する。「ダブルブラインド」査読とは、著者と査読者のどちらも相手が誰かを知らないことを意味する。

査読付き学術誌の編集をするのは誰か?
査読付き学術誌を出版するには専門家のチームが必要である。学術誌のスタッフには次のようなものがある。

  • ジャーナルエディターは、通常、出版経験と学術分野の知識を持つ経験豊かな研究者で、出版のあらゆる段階で著者と緊密に協力し、出版後の質問にも答える。
  • マネージングエディターは、管理業務やビジネス面でジャーナルエディターを補佐し、査読プロセスの管理を支援する。
  • 編集委員会はジャーナルエディターが集めた専門家集団で、学術誌の運営や維持について助言を行い、場合によっては査読をおこない、原稿の学術誌への掲載可否の決定を助ける。
  • コピーエディターとプルーフリーダーは、著者と協力して、原稿を読みやすく、言葉の間違いのない高品質な出版物へと仕上げる(それぞれの仕事については後述)。
  • プロダクションマネージャーは出版社に所属し、編集者から完成した原稿を受け取り、植字、校正、印刷版やデジタル版の出版に至るまで、原稿を管理する。プロダクションマネージャーは、学術誌と出版社、そしてProject Museのようなデータベースとの間の連絡役でもある。
  • 出版社が雇うその他の重要なスタッフには、ジャーナルマネージャー、購読・広告マネージャー、ウェブサイトマネージャー、植字工(タイプセッター)などがいる。

査読のメリット
論文の質の管理を確実にし、フィードバック、研究内容の推奨、および引用や「インパクトファクター」(雑誌論文がどれだけ頻繁に引用されたかを示す指標)などの追跡可能な格付けの提供などがある。これらは、出版プロセス以外でも、例えば、テニュア審査や昇任審査における研究の質の証明として有用である。

査読のデメリット
投稿から出版までに時間がかかることが挙げられる。このプロセスでは、著者、ジャーナルエディター、査読者の間で共同作業が必要になる。例えば、著者はジャーナルエディターの意見を聞きながら、査読者のアドバイスに従って原稿を修正する必要があるかもしれない。

ポイント

査読付き論文を出版するには、投稿から組版、データベースへのアップロードまで、3ヶ月から1年以上かかることがある。査読には時間がかかるが、専門家の評価を受けた質の高い出版物へと結実する。

査読なし

査読なし出版物とは?
一般的に、査読なし原稿は、出版前に専門家による正式な審査を受けない。例としては、書評、ブログ記事、会議録・プロシーディング、一部の百科事典の項目などが挙げられるが、これらに限らない。ただし、上記のカテゴリーの著作物は、出版される場所や方法によっては査読が付くこともある。

メリット
投稿から出版までに必要な時間が短いことが挙げられる。

デメリット
論文の質の管理、フィードバック、学術的な裏付けが欠如していることが挙げられる。一般的に、査読なしの出版物は、研究者・教員採用、テニュア審査、昇任審査において、査読付き出版物よりも低く評価されることがある。査読制がないカンファレンスや学会のようなの場では、引用や学術的なインパクトに関する正確な情報を提供できない可能性がある。

ポイント

査読付き学術誌と査読なし学術誌は、分野によっても用途が異なる。研究者としてのキャリアを積むには、査読付き学術誌の方がより重要である。一方、査読がないことは一般読者に訴求する一つの方法でもある。

適切な学術誌の選び方

学術誌のウェブサイトを読む
出版物が査読付きかどうかを知るには、学術誌のウェブサイトを読むか、出版社または編集者に問い合わせればよい。ウェブサイトには、学術誌のミッション・ステートメント、投稿規定(著者ガイドライン、スタイルシートなど)、編集委員および主要スタッフの名前、インデックス、その他の重要な情報が記載されている。

投稿先の候補となる学術誌のバックナンバーを閲覧する
目次や掲載論文を読み、自分の原稿がその雑誌の方法論や読者層、その雑誌が取り扱う広範な学術的な議論に合致するかどうかを判断する。

デジタル版と印刷版があるか
デジタル版と印刷版の両方がある学術誌で出版することが効果的である。Project Museのような、組織的に維持され定期的に更新される世界規模のデジタル・データベースに掲載され、定評のある学術出版社や商業出版社から印刷物としても入手できる学術誌から出版することが効果的である。世界中の多くの研究者は、まずインターネットや図書館の電子目録で資料を探す傾向にあるが、日本の文書館では印刷された目録が使われることが依然として多い。

インデックス
様々な機関が、学術研究のための有力な情報源と判断した査読付き学術誌のリストを、分野やテーマごとに分類して編集している。学術誌は、知識の生産に与える影響を評価する申請プロセスを通じて選定される。インデックスに掲載された学術誌で出版することで、読者があなたの論文を見つけやすくなり、信頼性も高まる。

学術誌を選ぶ際に問うべき観点
その学術誌は査読付きか?その学術誌はインデックスに掲載されているか?あなたが賞賛する論文はどの学術誌に掲載されているか?あなたの分野の主要学術誌はなにか?その学術誌はどのくらいの頻度で発行されているか?あなたの論文を読んでほしいのはどのような人か?

ポイント
  • あなたの理想的な読者は誰かを考え、その人たちに届く学術誌を選ぶこと。学術誌によっては、特定の地域(例:日本)、特定の分野(例:歴史)、学際的分野(例:ジェンダー研究)に焦点を当てているものもある。理想の読者に届く学術誌に投稿すれば、査読プロセスでより良いフィードバックが得られ、読者からの反応も増え、引用数も増えるので、インパクトファクターが大きくなる可能性が高くなる。
  • インデックスは、特定の団体の選考過程を反映しているが、質の高い学術誌を定義する最終的なものではない。インデックスに掲載されていない優れた学術誌は数多くある(例えば、編集委員会がインデックスの検討をしていないため)。学術誌がどのように選ばれるかを知るには、インデックスを作成する機関の方針を確認すること。
  • 学術誌はそのジャーナル名以上の意味を持つことがある。例えば、『日米女性ジャーナル』は、その設立時の事情によってこのような名前になっている *3 。この学術誌で出版するには、アメリカや日本の国民である必要はない。論文は日米の比較である必要はないし、女性以外のジェンダーに関するものであってもよい。タイトルは歴史的なものである。学術誌の名前を変えることは、ブランド、知名度、創刊者への敬意から困難である。

学術論文に共通する構成要素

学術誌の論文は通常6,000~10,000ワードで、次のような要素を含んでいる。

序論
読者の注意を引く「フック」で始まり、論文のテーマとその意義を説明し、重要な概念を紹介し、過去の関連論文を簡潔にレビューし、あなたの論文の最も重要な主張(メインアーギュメント)を明確に述べる。序論の最後には、論文の各節の概要と、それらがどのように組み合わさって最も重要な主張を支持しているのかを説明する文章を数文入れる。

ポイント
  • 先行研究を理解しようとし、攻撃しようとしないこと。自分のトピックについて何が出版されたかを知るために、その分野の文献を広く読むこと。
  • 序論は重要なガイドである。読者があなたの論文を理解するのに必要な基礎的な情報を与え、なぜあなたの研究について読む必要があるのかを伝えること。あなたの論文が、トピックに対する読者の見方をどのように変え、そのトピックに関する学術的な議論をどのように促すか?
  • 6,000~10,000ワードほどの論文であれば、通常2~3段落の序論で十分である。

最も重要な主張(または論文ステートメント)
論文が示す主要な考えや示唆を指す。最も重要な主張は論文をまとめる根幹になる。最も重要な主張は論文の序論に書くべきである。著者によっては「私は〜を主張する」(“I argue that…”)で始まる文章によってその文章を強調する人もいる。

ポイント
  • 最も重要な主張を述べる文には分析のキーワードを含めること。あなたの論文がテクストを精読する手法をとる場合は、そのテクストのタイトルと著者名を必ず主張を述べる文に含めること。
  • 1ページ目であってもできるだけ早く最も重要な主張を展開すること。何かを主張する前に長々と書かないこと。

標題をつけた4~6個の小項目
長さと一貫性を保つため、論文は通常、序論、2~4つの節からなる本論、そして結論から構成される。

ポイント

各節の標題には分析のキーワードを含めること。そうすることで、論文の足場ができ、読者に主要な概念を思い出させることができる。

結論
1段落より多くする。結論では、序論と同じ文章を繰り返すことなく、自分の主張を反復し、読者があなたの論文から何を学んだか、今後につながる示唆を説明すること。

文中引用と引用文献
出版プロセスの時間を節約するために、学術誌のスタイルシートに従って、適切に文献を引用する。

文末脚注
読者を本文に集中させるため、文末脚注の使用は必要最小限にする。

画像、許可、キャプション
画像(グラフや表を含む)は単なる装飾ではなく、分析を補強するものでなければならない。画像の所有者(アーティスト、出版社、文書館など)からの許諾が必要となる。例えば、本の表紙をスマホで撮影したり、誰かの芸術作品をダウンロードしたりして、それらを許可無く出版することはできない。本の出版社、アーティスト、アートコレクションから、画像を公開してもよいという許諾書を得る必要がある。画像の権利は著者が責任をもって取得すること。画像のキャプションは短くして(通常1文より長くしない)、権利者に謝辞を述べること。

ポイント

著作権のガイドラインを読んで、どの画像が著作権の範囲内なのか、「フェアユース(公正利用)」なのか、パブリックドメインで利用できるのかを確認すること。図書館や博物館のウェブサイト、あるいはウィキメディア・コモンズで公開されているからといって、その画像がパブリックドメインにあるとは限らない *4 。また、著作権法は国によって異なる。例えば、北米日本研究資料調整協議会(North American Coordinating Council on Japanese Library Resources, NCC)は、日本の権利者に画像の利用権利を願い出るための有用なガイドラインと電子メールの例を掲載している。

論文の抄録とキーワード
読者に論文の最も重要な主張や方法論を知らせ、データベースやインデックスで論文を検索できるようにするための便利なツールである。

著者略歴
たいてい100~200ワードで、慣例として、進行中の研究ではなく、出版物を記載する。

ポイント

雑誌論文は、学位論文の章立てとは異なる構成と読者層を有する。一般的に、学位論文の章は大きなプロジェクトの一部であり、主に著者の指導教員に向けて書かれており、著者がその分野で新進の研究者であることを示すのに役立つ。そのため、雑誌論文と比べて先行研究のレビューや注釈が多く含まれる。雑誌論文は独立したもので、1つの主張を擁護し、より広い読者層を対象としている。

査読付き学術誌に原稿を投稿した後の流れ

査読はどのように行われるか?『日米女性ジャーナル』の場合
まずジャーナルエディターが原稿を審査し、査読を受けるのにふさわしいかどうかを迅速に(理想的には1週間以内に)決定する。編集委員会に相談することもある。原稿が査読を受ける水準に達している場合、著者の名前や著者を特定出来る情報をすべて取り除く。匿名化された原稿は少なくとも2名の査読者に送られ、査読が行われる。査読者は6週間から2カ月ほどかけて、『日米女性ジャーナル』が用意したフォームに報告書を書き、原稿をそのまま掲載するか、軽微な修正を加えさせるか、大幅な修正を加えさせるか、掲載させないかを決定する。ジャーナルエディターは査読コメントを集め、著者に対して査読結果を説明し、今後の方針を示す。良い査読結果通知書には、変更すべき重要な点がまとめられている。原稿が査読を受ける水準に満たない場合は、ジャーナルエディターは理由を丁寧に説明し、適切であると判断される場合は次にとりうる行動を提案することもある。場合によっては、ジャーナルエディターは著者に対し、原稿を修正し、再投稿し、再度査読を受けるよう提案する。

査読者向けの質問例
査読者は、原稿を掲載すべきかどうか、どの程度の修正が必要かを判断し、報告書を提出する。査読者は、以下のような事項を検討する。

  • 原稿は学術誌のミッション・ステートメントをどの程度サポートしているか?
  • 原稿の目的はどの程度明確か?著者はその目的を達成できているか?
  • その学術的な成果は確かなものか?
  • 適切な文献が責任を持って使用され、適切に引用されているか?
  • 原稿はその分野に大きく貢献しているか(例えば、新しい研究成果を含んでいるか、学術的な議論を促しているか)?
  • 原稿の書き方や構成は適切か?
  • 要約すると、査読者は研究の正確さ、完全性、独創性を評価する。また、査読者は、査読している原稿の一部が既存の出版物と重複していると判断した場合、ジャーナルエディターに知らせる。
  • 査読者は、査読結果の理由と修正に関するアドバイスを提供する。

利益相反の可能性
査読者は、共同研究者、指導教員、その他著者やその研究成果と密接な関係にある人であってはならない。査読者は原稿を内密に扱い、著者の許可なく議論したり引用してはならない。

ジャーナルエディターによる決定
ジャーナルエディターからの査読結果通知書には、査読者の報告書を要約したものと、ジャーナルエディターが付け加えたフィードバックが記されている。著者をサポートするために、ジャーナルエディターは修正案を要約したリストを著者に提供し、どれが最も重要であるかを示すこともある。

2人の査読者の判断が異なる場合はどうすればよいか?
これはよくあることである!ある査読者は原稿をそのまま受理するよう提案し、別の査読者はリジェクトするよう提案するケースを何度も見てきた。このような場合、ジャーナルエディターは第3の査読者に原稿の評価を依頼するか、編集委員会に相談するかもしれない。ジャーナルエディターは査読が公正であったかどうかを判断するだろう。

査読後の流れ
著者には、査読者のアドバイスに従って原稿を修正する時間が与えられる(出版時期により数週間から数ヶ月)。修正された原稿を受け取ったジャーナルエディターは、原稿がコピーエディティングに回す状態になっているかどうか、あるいは再度査読が必要かどうかをチェックする。コピーエディティングを受けた原稿は著者に返され、著者はそれを確認する。時には複数回の修正とコピーエディティングが必要な場合もある。最終版の原稿は校正を受ける。できれば、以前の原稿を読んでおらず、「新鮮な目」で原稿に接することができるプロの校正者が校正する。著者には校正者による変更点を承認してもらう。そして、出版されたときにどのように見えるかを示す「校正刷り」と呼ばれる組版が行われる。著者は校正刷りを見て、間違いがないことを確認する。これで出版準備は完了となる。校正の段階で、著者は誤りを修正すべきであるが、それ以外の変更は控えるようにする。

出版同意書
著者が署名し、出版社に提出する。著者は、原稿がオリジナルであり、他で発表されていないことを保証し、学術誌の出版条件に同意する。この用紙は著者に投稿の記録を残し、著者が再出版(リプリント)を依頼する際に役立つ。

ポイント
  • 編集作業中は、全員が同じ版の原稿を使用していることを確認し、作業経過が失われないよう、変更点を追跡するのが最善である。原稿を返送する際には、メールの件名にその日の日付を忘れずに記載すること。そうすることで、異なる版の原稿の管理が確実になる。
  • 著者は、校正段階の前までに原稿を入念にチェックする必要がある。校正刷りのページに修正を加えることに費用と時間がかかることがあるためである。
  • 著者が査読者、ジャーナルエディター、校正者の提案に同意できない場合は、ジャーナルエディターと話し合い、その理由を説明するのが最善である。編集は交渉の場でもある。

その他の留意点

最も洗練された著作物を提出すること
正確で雄弁な文章で書かれ、学術誌のスタイルシートに従って体裁が整えられた、引用や画像を含む完全な原稿を提出すること。原稿の書き方は重要である。言葉の使い方、流れ、読みやすさについて、誰かに原稿をチェックしてもらうとよい。論文の体裁を修正するには時間がかかるが、査読者や編集者が校正に専念する必要がない方が、内容に関するより良いアドバイスを得ることができる。

ターゲットとする読者に向けて書く
『日米女性ジャーナル』のように学際的な読者を持つ学術誌の場合、広く教養のある読者を対象として書くのがベストである。読者は知的で、協力的で、あなたの研究に関心を持っていると想定してみること。専門用語を使ったり、守りに入ったり、教養のある人なら知っていることを過剰に説明したりせず、主要な概念や理論を説明しながら、肯定的に執筆する。外国語のタイトルには英訳をつけることで、論文はより読みやすくなる。学術誌のスタイルシートには、その学術誌の好ましい翻訳規則についてのアドバイスが記載されている。

学術誌のスタイルシートを使って、出典を引用し、参考文献を書く
文献を正しく引用し、参考文献の完全なリストを含めるようにする。著者のガイドラインや論文の構成に関する指示についてはスタイルシートを参照すること。

編集と校正は別物であるが、ともに重要なプロセスである

  • 編集
    簡潔に言うと、編集とは文章をより読みやすくすることである。ジャーナルエディターは、著者が内容を明確かつ正確に、上手く整理し、適切な引用が付された方法で伝えることができるようサポートする。編集には、批判的思考、トピックに関する知識、何をどれだけ修正するかという判断、文章能力、スタイルに関する規則の熟知、対人コミュニケーションなどのスキルが求められる *5 。ジャーナリストのDavid Carrは、「編集者は、人間からなるキーボードをタイプして優れたストーリーを作り上げる。どのキーをいつ押すか、どれくらいの強さで押すかを知ることは、芸術であり、熟練した技能でもある。偉大な編集者は協調性と決断力の両方を兼ね備えている」とうまく表現している *6
  • 校正
    通常、編集の後に行われ、スペルミス、文法ミス、句読点ミスなどの表面的な誤りを修正し、文章が適切な体裁をとっているかどうかを確認する。
ポイント
  • 原稿は何度も編集と校正を繰り返さなければならないこともある。
  • 投稿原稿を書いたらすぐに編集する。少し間をおいて校正する。ときには文書のフォーマットを変更することが役立つ。例えば、WordのドキュメントをPDFとして保存すると、間違いを発見しやすくなることがある。

特殊な文字
多くの学術誌では、日本語の仮名や漢字のような特殊文字は、議論に不可欠なものでない限り、使用しないことを推奨する。その理由は、組版の難しさや、印刷物やデジタル出版物における文字の歪み(文字化け)の可能性を減らすためである。植字をサポートするために、編集者は特殊文字をリストアップした「目録」を作成することもある。

自分の論文を再出版する
たとえ一方が査読付き学術誌で他方が査読なし学術誌であっても、同じ論文を2つの異なる学術誌で出版することはできない。学術誌に掲載された論文を後に書籍に掲載することは可能であるが、その逆はできない。既刊論文の原稿を自分の書籍に入れたい場合は、ジャーナルエディターにメールで転載権を依頼すること。多くの場合、出版社は使用承諾書を持っており、著者が記入し、ジャーナルエディターが署名することになっている。

透明性と倫理
学術誌のスタッフ、査読者、著者は、倫理規範に則り、慎んで行動することが期待される。ジャーナル・エディターの責任と期待されることについての有用なリストについては、出版倫理委員会が発行した“COPE Best Practice Guidelines for Journal Editors”を参照のこと。

出版にかかる費用
通常、アメリカを拠点とする学術誌に論文を掲載するために、著者が費用を支払うことはない。また、著者は論文に対する報酬を受け取らない。

自分の論文を流通させる
出版された学術誌の論文を個人のウェブサイトに掲載してはならない。それにより、論文の正確な引用回数や著作権保護が保証され、正確な読者数の把握に役立つ。このような情報に基づいて、その学術誌の出版を継続すべきかどうかを決定することができる。ある論文を読みたい読者がインターネット上や図書館で論文を見つけることができない場合、学術誌のスタッフにメールを送ってもよい。

最初の論文にとりかかる
自分の研究に適していると思われる学術誌を読んだら、いくつかの論文を選び、手本として活用する。どのように主張を述べ、展開し、出典を引用し、結論を組み立てているのかを参考にする。学会で報告した原稿、学位論文の章、大学院のゼミでのレポートなど、同僚や専門家に対して既に発表・提出し、フィードバックを得たものを、論文にすることを検討する *7


脚注

*1 アリサ・フリードマン(Alisa Freedman)教授は、オレゴン大学で日本文学、文化研究、ジェンダー研究について教えており、『日米女性ジャーナル(U.S.–Japan Women’s Journal)』の編集長を2022年まで務めていた。主な著書に Japan on American TV: Screaming Samurai Join Anime Clubs in the Land of the Lost (AAS Asia Shorts Book Series, Columbia University Press, 2021), Tokyo in Transit: Japanese Culture on the Rails and Road (Stanford University Press, 2010), 川端康成『浅草紅団』の翻訳(University of California Press, 2005), 共編著Modern Girls on the Go: Gender, Mobility, and Labor in Japan (Stanford University Press, 2013), Introducing Japanese Popular Culture (Routledge, 2018) がある。日本のモダニズム、東京研究、若者文化、ジェンダー、テレビ、社会批評としてのユーモア、教授法、印刷物とデジタルメディアの交錯などについて幅広く発表しており、日本文学の翻訳も出版している。また、優れた指導者としてアメリカ国内で評価されている。 戻る

*2 本稿は国際交流基金ウィンター・インスティテュート(2019年)および歴史家ワークショップ(2021年)における発表に基づくものである。有益な示唆を与えてくれた、イベントの主催者、参加者、そして Jan Bardsley に感謝したい。 戻る

*3 Alisa Freedman, “Editor’s Introduction: Celebrating 60+ Issues of U.S.–Japan Women’s Journal,” U.S.–Japan Women’s Journal. “Celebrating 60+ Issues of U.S. – Japan Women’s Journal.” 戻る

*4 便利なガイドとしては、以下を参照。“U.S. Copyright Office Fair Use Index,” Copyright. gov. n.d. [accessed July 28, 2022]. 戻る

*5 実用的なガイドラインのリストについては、以下を参照。Josh Bernoff, “The 11 Qualities of Highly Paid, Ultra-Valuable Editors,” Without Bullshit, April 12, 2017. 戻る

*6 David Carr, 以下からの引用。 Insider Staff, “What Makes a Great Editor? Part 1,” Times Insider, June 16, 2014. 戻る

*7 原稿を論文として出版にするために役立つ手引書として、Wendy Laura Belcher, Writing Your Journal Article in Twelve Weeks: A Guide to Academic Publishing Success, second edition (University of Chicago Press, 2019) などがある。 戻る