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2021年4月22日:第4期第2回英文校閲ワークショップ

第4期第2回英文校閲ワークショップを開催します。

日時|2021年4月22日(木)日本時間17:30-19:30
場所|ZOOM(初回と同じリンクです)
費用|参加無料!(通信代はご負担ください)
運営|山本浩司(東京大学経済学部)
   安平弦司(日本学術振興会/ユトレヒト大学)
登録|不要(初回にご参加頂いていない方は前日4月21日までに安平 (g.yasuhira[at]uu.nl) にご連絡ください)
*隔週ペースで木曜の17:30-19:30をめどに10-13回程度、8月中旬まで開催予定(第3回はGW明けの5月13日予定)です。詳細は参加者と相談しながら決めていきます。

【当日までの課題】

1. 教科書Style第3章Actionsを読み、練習問題3.1 〜 3.7までをやってくる。
2. ご自身の分野の任意の論文アブストラクトを共有可能なテキストファイルとして持参してください。グループ・ワークで使用する予定です。

【当日の演習内容】

1. 第3章の内容について確認・グループディスカッション・全体で議論、質疑応答。
2.  持参した論文要旨を、第3章のエクササイズに従って一部改悪。改悪したアブストラクトをbreakoutグループで他の参加者と交換し、相手の改悪アブストラクトをわかりやすく書き直してから、議論。
3. 次回の説明 (Style第4章Characters)。

参加される皆さまには、当日までに上記の課題をこなしてきて頂きたいと思います。英文校閲WSでは、開催日程やZOOMリンクの連絡、課題文献・検討用原稿の共有やエクササイズについての議論などなどを、Slackを利用しておこなっています。参加希望の方は、安平からSlackへの招待メールをお送りいたしますので、お手数ですが上記メールアドレスまでご連絡くださいますようお願いいたします。

もちろん、関心はあるけれども予定があわず今回のミーティングに参加できない方も、次回以降の参加でもOKです!みなさんのご参加をお待ちしております。

フランス語版リサーチ・ショウケース Ma recherche en 8 minutes 開催報告

2021年2月22日に、第1回フランス語リサーチショウケース : Ma recherche en 8 minutes をオンラインで開催しました(プログラムはこちら)。当日の様子を、本ワークショップのスピーカーの一人である須田永遠さんが報告してくださいました!

フランス語での初開催となった今回のリサーチ・ショウケースでは、政治史、宗教史、思想史、美術史、教育史、文学と、実に多くの専門をもつ9名のスピーカーが集まり、それぞれ8分間で自身の研究のエッセンスを紹介したのち、7分間の質疑応答にのぞみました。

当日の司会は、名古屋大学教授で18世紀科学史がご専門の隠岐さや香先生が、コメンテータは国際日本文化研究センター教授で、比較文学比較文化・文化交流史がご専門の稲賀繫美先生が務めてくださり、常時40名以上の参加者によって活発な議論が交わされました。

会の最後には、オーディエンスの投票により、発表内容や構成・議論の進め方等に基づき Research Showcase Prize の受賞者が選ばれ、今回はフランスの初期写真史について発表された、東京大学大学院博士課程1年の鈴木実香子さんが受賞されました。

日本で研究を行う仏文研究者にとってフランス語で発表する機会はそう多くありません。私自身、留学を経験し、大学院でフランス文学を学ぶ身でありながら、帰国後はフランス語で発表する機会(そして質疑に対し応答する機会)はほとんどありませんでした。また、自分の研究を8分という短い時間にまとめ、他の専門分野の方に伝えるには、普段の研究発表とは別の組み立て方が必要になります。

参加を決めたものの、当初はフランス語で発表することへの恐怖——何より質疑応答の7分間、質問に答えられない不安より質問そのものを聴き取れない恐怖——とプレッシャーに苛まれていたのですが、発表前にスピーカーのみなさんと顔合わせをした際、だれひとり例外なく緊張していることを知ってやや安堵するとともに、イベントがはじまってからは司会の隠岐先生から「質問を聞き直すことを一切ためらう必要はない」というスピーカーの指針が周知徹底されたこと、また、ギャラリーのあたたかな雰囲気が背中を押してくれました。イベント中は終始司会の隠岐先生をはじめ、コメンテーターの稲賀先生や参加者の多くがイベントを良いものにしようという意志を持ち、発表者の論点を尊重しながら鋭い質疑と真摯な応答が交わされたように感じます。みな外国語で研究の要点を発表することの困難と苦労を分かち合っているからこそ、このような素晴らしい場になったのだと確信しています。

今回のリサーチ・ショウケースで最も印象的であったこと、それは意見を述べることがそのまま相手の感情や信頼を損なうことを意味しない、すぐれて‘‘成熟した’‘場であったということです。こうした場に立ち会うことのできる機会をいただいたことを司会、コメンテータの先生方、運営委員の方々、レビュワーの先生方、参加者のみなさまに心より感謝いたします。どうもありがとうございました。


そして、今回発表されたスピーカーの方々には、後日アンケートに回答していただきました。以下では、その一部をご紹介します。

準備と発表を通して楽しめたこと、苦労したこと

楽しめたこと:外国語でアウトプットするという作業そのもの。留学経験がなく、キャリアが浅いと、なかなかこういった機会はないが、今回の機会を頂いて2ヵ月少々、準備期間は常に楽しめた。
苦労したこと:何よりも時間制限への対応。しかし、8分で報告を完結させるという経験を通じて、外国語での発表練習に留まらないそれ以上のものを得られた気がする。

(苦労したこと)フランス語で発表する一方、聞き手が日本人(それも異分野の研究者)である点で、用語の選定や説明の方法に苦労しました。稲賀先生も指摘されていましたが、研究者としてフランス語で何かを発表するときには、「フランス語圏出身」という背景を持つ人を相手にすることが想定され、日本人の発表者としての研究の特徴などを意識して発信することになると思います(もちろん第二言語としてフランス語を使う人口も多いので、この限りではないですが、英語に比べれば頻度は高いと思います)。原稿を書き始めた時、まずこの問題に直面して、消化しきれずに終わってしまいました。研究者として今後も考えて行かなければならない問題だと思います。

フランス語で学術的な文章を書くのがほとんどはじめてのことだったので、やはり初稿の作成に一番苦労しました。これにだいたい、10日間くらいかかりました。その後、レビュアーの先生からコメントをいただくのですが、これを読むのがとても面白かったです。というのも、文法や表現に限定されないコメントによって、蒙がひらかれ、今後の課題がよく見えるようになったからです。

今後の参加者と共有できそうなこと

もし可能なら、ネイティブ相手でなくとも良いので、リハーサルをする。発音を直してもらえたり、PowerPointの不備を指摘してもらえたりと、発表の質が上がる。
もし原稿の執筆過程で削ったところがあるのなら、質疑応答に備えて残しておく。「発表に欠けている部分」であることに変わりないので。
他の発表者のレベルが想像以上に高かったとしても、凹まない。分野も異なれば、キャリアも違う。乗り切った自分たちを褒めるべき。

限られた時間の中で自分の研究の要点を伝えるにあたって、情報を適切に取捨選択すること。

リバイズのときに、こんな質問がくるかも、ということを考えながら、何を残し、どこを削り、あるいはここは補足説明を足す必要がある、などを考えることは、当日の質疑の緊張対策としても、表現の幅を広げるうえでも有益でした。

Research Showcase への参加が今後のキャリアと研究にどのように役に立ちそうか

自分の研究の要点をフランス語でまとめる(かつ、覚える)ことになったので、留学や国際学会でストレスなく会話が出来そう。
フィードバックでの指摘を受けて、ざっくり削る勇気を持てた。自分がこだわりたいところと、聴衆にとって大切な情報とを、分けて考えられるようになった。

今後フランス語圏での発表に向けての練習になったのは勿論のこと、ここまで分かりやすさに拘って報告準備したことは意外になかったので、普段のゼミから学会報告まで、あらゆる研究報告に向けた意識改革になった。
原稿のフィードバックでは、簡潔明瞭さを意識しつつも、口頭報告ではどの語を指すか聞き手に考えさせてしまうような代名詞の使い方は避けねばならない、という教訓を得た。

仏語での執筆や発表がはじめてだったので、出来栄えはともかく、それをやり遂げることができたことに自信をもつことができました。今後、国内外での発表に挑むための経験を積むことができたかなと思います。


まとめ

以上、フランス語版リサーチショウケースは初回開催でしたが、日本各地、そしてフランスやスイスからの多くの参加者を得て、盛況のうちに終えることができました。隠岐先生、稲賀先生をはじめ、レビュアーとして発表者の原稿に多くの貴重なご助言を与えてくださった先生方、当日お越しくださった参加者のみなさんに心から感謝いたします。好評につき、フランス語版リサーチショウケースは第2回開催を予定しています。英語版と併せて、次回告知にご期待ください!

【参加者募集】Front Runner Series: 多言語論文執筆セミナー Vol. 7(5/20 17:00-18:30)

歴史家ワークショップでは、5月20日(木)17:00~18:30(日本時間)に、「Front Runner Series: 多言語論文執筆セミナー Vol. 7」と題したオンライン・セミナーを開催いたします。また同日18:30~19:30には、任意参加の懇親会を予定しております。

開催概要

日時|5月20日(木)17:00~18:30:セミナー/18:30~19:30:懇親会(任意参加)
ゲストスピーカー仲田公輔さん(岡山大学社会文化科学学域/文学部・講師)
ファシリテーター大津谷馨(リエージュ大学・博士課程)
費用|無料
場所|ZOOMを利用したオンライン開催(リンクは、登録フォームにご記入のメールアドレスにイベント当日の朝に送付します)
登録https://forms.gle/AAiGWg1HyaFhw8Us5
※歴史学系の学生・研究者のみならず論文執筆や外国語での執筆にご関心のある方は、どなたでもお気軽にご登録ください。

このセミナーでは、特に歴史学分野で活躍するノンネイティブの若手研究者に外国語での執筆経験談を共有していただくことで、「外国語での論文執筆における壁」を乗り越えるヒントの得られる場を提供することを目的としています。具体的には、外国語での論文執筆に際して実践している工夫から、博士論文・単著・編著の一章分など異なるフォーマットの書き分け方まで、スピーカーの体験に基づいたスキル面の情報提供を行います。それだけでなく、国外の出版社からの出版、留学、研究の進め方、国際学会でのネットワーキングなど、外国語での論文執筆に関わる経験談もお話しいただきます。さらに、質疑応答や懇親会を通じて、参加者のみなさんと外国語での執筆に関する悩みや体験談を共有することで、この問題についての理解を深め、実践のための知恵を蓄積することを目指しています。

今回は、岡山大学講師の仲田公輔さんをお招きし、大津谷馨(リエージュ大学・博士課程)がファシリテーションを担当します。英語での論文執筆・投稿における目標や工夫・苦労、イギリスでの博士論文執筆のご経験と単著出版に向けたプロセス、院生・キャリア初期研究者中心のワークショップを元にした編著出版への参加、英語や日本語で出版された学術論文と博士論文との関係などについて、ざっくばらんにお話いただきます。ご関心のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。

スピーカー・プロフィール

仲田公輔(リサーチマップ
岡山大学社会文化科学学域/文学部講師(2020年~)。2012年、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。2020年、セント・アンドルーズ大学歴史学部博士課程修了。PhD(History)。研究関心は、①ビザンツ帝国のアナトリア東部境域統治、②ビザンツ統治時代アルメニアにおける社会・文化の変容、③ビザンツの外交・他民族統治におけるキリスト教文化(特に聖人崇敬)の利用。主な論文に、Uxtanes of Sebasteia and Byzantine Armenian Relations in the Tenth Century, Revue des Études Arméniennes 38 (2018/9), pp. 167-194など。

参加登録

参加をご希望の方は、こちらのフォームよりご登録をお願いいたします。

2020年度 Coffee Time Series 開催報告書

2020年度、歴史家ワークショップでは、大学院生の研究生活をサポートするイベントシリーズ Coffee Time Series の開催を支援してきました。本イベントシリーズの取り組みは、当事者でもある大学院生が運営を担った点においても画期的です。その詳細について、運営チームの皆さんに報告書を執筆いただきましたので、ここに公開いたします。

Coffee Time Series は、気軽に研究の楽しさや研究にまつわる悩みを共有し助け合える場を作りたいという思いから始まったイベントシリーズです。国内外の博士課程に在籍する大学院生が中心となって運営を行なっています。一連のイベントを通じて、孤独になりがちな大学院生・研究者が分野を横断して集まること、またアカデミアの外にいる方々とも人間的なつながりを構築することを目標として、2020年度中に計4回のイベントを開催しました。

第1回「博士課程におけるチャレンジ」(2020年7月10日開催)

初回は、「博士課程におけるチャレンジ」をテーマに、近世オランダ宗教史を専門とされている安平弦司さん(日本学術振興会特別研究員CPD)をゲストにお迎えし、25人ほどのオーディエンスの方とも話し合いの場を設けました。

安平さんにはオランダ・ティルブルフ大学での博士課程留学中での体験を中心に、研究と留学生活についてお話しいただきました。トークでは、まず、研究者を志したきっかけや動機を交えつつ、ご自身の経歴を紹介していただいた後、ラテン語やオランダ語の手書き文書の解読と英語での執筆、現地での住宅探しの困難、奨学金や助成金の獲得など、オランダでの研究生活について詳細に振り返っていただきました。また、博論執筆のスピードを上げるための具体的な方法論についても言及していだたき、実際に実践したライフハックについてお話しいただきました。安平さんからのトークに続くディスカッションでは、実際の学位取得の方法やその後のキャリア形成などについての多数の質問が、参加者の大学院生から出ました。事後アンケートでは「海外生活における困難な状況に直面する場合について、ご本人の具体的な経験を例に語られ、多くの方々がご自身の持つ経験も一緒に共有していたところなどが良かった」というご意見をいただきました。

安平さんに博士課程での実際の悩みを打ち明けていただくことで、参加者が話題を共有しやすい回となったと思います。企画者の僕自身、現在博士課程留学を行っている毎日の生活の中で共有できる悩みがいくつもあり、「自分ひとりだけが持っている悩みではないんだな」と安心しました。院生や Early Career の研究者が他の人と人格的な繋がりを作る場として Coffee Time Series が、面白いイベントとなったことが非常に嬉しいです。(槙野)

第2回「研究と育児」(2020年9月11日開催)

第2回は、「研究と育児」をテーマに、中近世エジプト史がご専門の熊倉和歌子さん(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教)をゲストスピーカーとしてお招きし、37名の方が参加してくださいました。熊倉さんには、「ある歴史研究者の育児・仕事・研究・生活」と題し、今回のトークの内容もあくまで一例であると断ったうえで、就職活動と出産から現在までのご自身の生活、育児・仕事・研究・生活の両立のために実践している工夫、学界への要望についてお話しいただきました。

トークでは、まず、博士号取得から就職活動と出産、出産後の仕事・研究への復帰、子育てしながらの研究や仕事、現在の日常生活などの具体的なご経験について共有してくださいました。次に、実際に工夫されている点として、パートナーとのスケジュール共有や家事の効率化など家庭のマネージメント、机に向かわないとできない作業とそうでない作業の仕分け、研究者コミュニティからの孤立を避けるための共同研究の積極的活用を挙げられました。また、学界に望むこととして、学会などのイベントは平日9時から17時までの時間帯での開催を基本としてほしい、休日開催の場合は託児所を用意してほしい、さらに公募の際には雇用条件や給与の額を明確にし育児中の研究者への支援の意思を示してほしいという要望を提示されました。その他に、大切だと思うものとして、研究したい気持ちを諦めずに持ち続けること、話のできる環境や助言をくれる人の存在などに言及されました。最後に、人生設計は特にしていなかったが、余裕のあるときに着実に研究を進めて蓄積を作っておいたことで、いざというときに自分を救ってくれるリソースが培われていたというお話がありました。

このイベントには事前質問も多く寄せられ、参加者の関心の高さが窺えました。また当日のディスカッションや懇親会でも、多くの方がご自身のご経験や悩みを共有してくださいました。ディスカッションでは、まず、ドイツに留学しながら子育てをしている纓田宗紀さん(アーヘン工科大学)から、熊倉さんのトークへのコメントとご自身のドイツでのご経験を紹介していただきました。他の参加者の方々からも多くの意見や質問が集まり、保育園探しの苦労、予定を立てることの難しさ、また学会の際に託児サービスがあっても開催地まで公共交通機関を使って連れて行くのがそもそも大変といった経験談には、子育て中の参加者のみなさんが強く共感されていました。また今後子育てに臨もうとする参加者の方からは、出産のタイミングや託児サービスの確保に関する悩みが寄せられました。しかし、このような様々な困難や苦労がありながらも、子供の存在が研究や仕事へのモチベーション維持につながっているというお話もありました。事後アンケートでは、「ゲスト以外にも子育て中の方の状況を聞けて良かった」、「同業者かつ同世代で情報交換できる人が身近にいなかったので参加できてよかった」などのご感想をいただき、同じテーマで他の研究者の体験談も聞いてみたいという要望も多く寄せられました。

イベントの中では、これまで私自身あまり話を聞く機会がなかった育児を含む研究者の具体的な生活と仕事・研究のお話を伺うことができ、自分のライフプランやキャリア形成を考える上でも非常に参考になりました。熊倉さんや参加者の方々のご経験談を伺う中で、自分の将来の生活について抱えていた漠然とした不安が少し解消されたように思います。またイベントの企画を通じて、このような情報交換の場が切実に必要とされていることを実感しました。熊倉さんが提示してくださった学界への要望を実現し、研究者が自身の生活において多様な選択をしつつ誰もが研究を楽しく続けていくことのできる環境づくりを進めるために、自分のできることを実践していきたいです。(大津谷)

第3回「アカデミア外の仕事と研究」(2020年12月11日開催)

第3回は、「アカデミア外の仕事と研究」をテーマに、中村優子さんをゲストにお招きしました。中村さんは、近代(戦前)東京における女性の移動・公共空間利用行動について博士論文を執筆された後、外資系企業に User Experience Researcher として勤務されています。中村さんには、27名の参加者に向けて、博士論文執筆中から一般企業でお仕事されていた経験を対談形式でお話しいただきました。

対談では、事前に参加者の方から質問を集った上で、主に博士論文執筆中の活動、現職に就くまでの道のり、現在のお仕事の三点を軸に中村さんにお答えいただきました。特に、建築学の中でも歴史的・社会史的アプローチを利用して博士論文を執筆された中村さんがこれまで経験されたお仕事の内容、博士論文と仕事との両立の仕方、現在のお仕事と研究活動で得た能力の繋がりについて、詳細にお話しいただきました。現在のお仕事は、博士課程でのご研究に直接関係しているわけではないものの、研究活動に不可欠なリサーチを実行する・情報を集める能力等は現在のお仕事にも活きる重要な能力であると述べられました。また、アカデミア外での就職を選択した理由についても具体的かつ率直にお話しいただき、自分の興味関心や適性を明確にした上で将来のキャリアについて考えることの重要性を指摘されました。

将来のキャリア形成・支援といったトピックは特に参加者の方の関心の高さが窺え、全体でのディスカッションや懇親会でもこの点について活発に議論が交わされました。特に文系の場合、アカデミア外でのキャリアを描きづらい、周りにロールモデルが少ないといった悩みがあり、なかなか企業で働くイメージがつかみにくいという声が挙がりました。中村さんからは、研究活動を通じて得た能力を一般企業の仕事にも応用できるとのお話があり、アピールポイントをつくることが重要であるとのご指摘いただきました。また、就職までの具体的なステップについて、最初のキャリアの積み方、CVでのアピール方法、博士課程学生の採用に積極的な企業の探し方、その他ウェブサイトなどについて情報交換が行なわれました。

イベント後には参加者の方から、アカデミア外でも様々な選択肢があるのだと前向きに考えられるようになったといった声をいただきました。引き続きアカデミア外で活動されている方の経験談をもっと聞いてみたい、企業の採用担当の方の意見も聞いてみたい、などのご意見もいただきました。院生や若手研究者にとってキャリア形成についての悩みはつきものですが、研究者が能力を活かしつつ多様なキャリアパスを描いていけるようになるための一歩として、参加者の方々と様々な視点や情報を共有できたことを嬉しく思います。(赤﨑)

第4回「研究にまつわる悩みの分かち合い」(2021年2月26日開催)

第4回は、「研究にまつわる悩みの分かち合い」をテーマに、運営メンバーと参加者の皆さんで「当事者ミーティング」を行ないました。研究を進めていくうえで、文献の読み方や整理の仕方、モチベーションの維持、研究と育児・家事・介護とのバランスなど、さまざまな悩みに出くわします。しかし、そうした悩みを誰かに相談したり、吐き出したりできる機会が少ないのではないか——そのような問題意識に基づくものです。

今回用いた「当事者ミーティング」という手法は、歴史家ワークショップが2020年6月に開催した「セルフケア・ピアサポートWS」において、一般社団法人リヴオンさんからご紹介いただきました。近い立場にある当事者間での問題解決や、各自が実現したいことの手がかりとなる「次の一歩」を見つけるための対話型ワークショップです。3-5名程度のグループに分かれたのち、ファシリテーターの進行に沿いながら、まずは1名が、「気になっていること」や「困っていること」「実現したいこと」を打ち明けます。他のメンバーは、いろいろな質問をしてその悩みの中身や背景などを掘り下げ、ついで、その解決に向けた自分なりのアイデアを出していきます。この一連の過程を通して、悩みを打ち明けた人もアイデアを出した人も、メンバー全員がそれぞれの問題解決・目標実現の手がかりを見つけることが「当事者ミーティング」の狙いなのです。

今回は、「セルフケア・ピアサポートWS」の運営に携わった藤田風花さん、安平弦司さん、吉川弘晃さんにご協力いただき、運営メンバー全員で事前にファシリテーションの練習をした上で、当日は合計16名を3グループに分けて「当事者ミーティング」を実践しました。じつは「参加者の多くが初対面、しかもオンラインという環境で、発言するのがなかなか難しいのではないか」という一抹の不安を企画者は抱いていたのですが、実際には、どのグループでも積極的に質問・アイデア出しが行なわれ、イベント後に実施したアンケートでも、「研究へのプレッシャーが軽減された」「(今まであまりなかった)他大学の院生・若手研究者と話す機会となり、充実した時間だった」といった、ポジティブな感想をいただきました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、研究にまつわる悩みや、それを相談できる人間関係の断絶が深刻化する中、今回のような分かち合い、助け合いの場が必要であるとあらためて実感しました。今回参加してくださった皆さんも、この経験を生かして、自分のまわりにいる人たちと一緒に、ぜひ「当事者ミーティング」を実践していただけると嬉しいです。(北川)

総括・2021年度に向けて

2020年度、Coffee Time Series では、以上4つのオンラインイベントを開催しました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大後に開始されたこのシリーズではオンラインで初めて知り合いになった運営メンバーもいる中で、互いに支え合い、楽しみながら、一連のイベントを企画・運営することができました。加えて、イベントの企画・運営やファシリテーション、ピアサポートの実践などにおいて、それぞれのスキルアップを実感するとともに、立場や環境の異なる他者を理解するための意識を高めることができました。また、一連のイベントを通して、研究生活の楽しさや悩みを共有・共感したり、研究者のライフプランやキャリアの選択肢について考えたりする機会を提供できたと思います。

2021年度も引き続き、研究の楽しさやワークライフバランス、研究者のキャリア、ピアサポートなどをテーマとしたイベントを実施していく予定です。今後も、Coffee Time Series が気軽に悩みを共有できる支え合いの場として機能し、誰もが楽しく研究を続けていける環境作りに寄与できること、またイベントを通してより多くの方とお会いできることを願っています。今後扱ってほしいテーマや Coffee Time Series の運営に参加したいという意欲をお持ちの方は、こちらよりお気軽にご連絡ください

2020年度 Coffee Time Series 運営メンバー(五十音順):
赤﨑眞耶
市川佳世子
大津谷馨
纓田宗紀
北川涼太
篠田知暁
藤田風花
槙野翔

第4期英文校閲ワークショップを始めます

もうすぐ新年度ですね! 気持ちも新たに、第4期英文校閲ワークショップを開始します!

スタートアップ・ミーティング

日時|2021年4月8日(木)日本時間17:30-18:30
場所|ZOOM(リンクは当日メールにて共有します)
費用|参加無料!(通信代はご負担ください)
運営|山本浩司(東京大学経済学部)
   安平弦司(日本学術振興会/ユトレヒト大学)
登録|https://forms.gle/9S8XFDsZCA1gVaCq6 (登録は前日4月7日まで)
*隔週ペースで木曜の17:30-19:30をめどに10-13回程度、8月中旬まで開催予定です。詳細は参加者と相談しながら決めていきます。

英文校閲ワークショップとは?

英文校閲ワークショップは、海外のジャーナルに論文を投稿したい歴史学系の研究者を対象に、英語論文執筆にまつわるスキルアップの場を提供しています。第一期から第三期では、英語での論文の書き方や注意点を共有したり、投稿論文の草稿を複数人で読んで改善点を議論したりといった活動が展開されてきました。これまでは院生・若手研究者を主対象としてきましたが、第4期はあらゆるキャリアステージにおられる研究者の皆様の参加を歓迎いたします。

英語文法の正誤をチェックするだけなら、有料の英文校正サービスを利用するのも一つの手でしょう。しかし英文校閲ワークショップなら、同じ歴史学分野で活動する研究者の視点から、議論の一貫性チェック、脆弱性の指摘、効果的な強調の仕方など、このワークショップならではの内容が提供できるはずです。

参加者の声・これまでの成果

これまでの英文校閲ワークショップ参加者からは、以下のようなコメントをいただきました。

論旨の運び方やパラグラフ内での文のつなぎ方など、論文のプレゼン方法をより真剣に考えるようになった。結果として研究内容・論旨の明確化にもつながったように思う。また、自分の英語論文の構成を考える際、あるいは同僚の英語論文にコメントする際、根拠に基づいて自分の考えを持つことができるようになったと思う。

査読コメントへの対応方針やドラフトの修正の仕方について、自分自身の原稿でも他の参加者への原稿でも多くのノウハウを身につけることができた。現在自分は英語を中心に研究報告をしているが、もともと英語が得意な方ではないこともあり、しばしば議論を組み立て洗練させる中で五里霧中となる。そのような時作業を進める、指針となる考え方を得られたと思う。

また、ワークショップ内で論文原稿や発表要旨を検討したのち、見事学術誌や学会にアクセプトされた方も多くいらっしゃいます。これまでアクセプトされた学会誌や学会は以下の通りです。

論文掲載

  • Revue du monde musulman et de la méditerranée (2019)
  • Documenti e studi sulla tradizione filosofica medievale XXX (2019)
  • Mariner’s Mirror (2020)
  • Japanese Journal of Religious Studies (forthcoming)
  • The European Journal of Japanese Philosophy (forthcoming)

国際学会報告

  • 15th Conference of the International Society for Utilitarian Studies, ‘Utility, Progress, and Technology’(ドイツ・カールスルーエ、2018年7月24~26日)
  • Southern Political Science Association(アメリカ・ルイジアナ州ニューオーリンズ、2018年1月|テキサス州オースティン、2019年1月)
  • Midwest Political Science Association(アメリカ・イリノイ州シカゴ、2018年4月|2019年4月)
  • Northeast Workshop in Japanese Politics(アメリカ・ニューハンプシャー州ハノーバー、2019年8月)ポスター発表
  • KCL World History Student Conference(イギリス・ロンドン、2018年5月)
  • Association for Asian Studies(インド・ニューデリー、2018年7月)
  • British Association for Japanese Studies(イギリス・シェフィールド、2018年9月)
  • International Conventions of Asian Scholars 11回大会(オランダ・ライデン、2019年7月)
  • Society for Reformation Studies 27th Annual Conference(イギリス・ケンブリッジ、2020年3月31日~4月2日)
  • Scientiae 9th Annual Conference (オランダ・アムステルダム、2020年6月2日~6日)
  • Engaging margins: Framing imagery as embodiment of cognitive processes(ベルギー・ブリュッセル、2020年10月8日~9日)

留学プログラム等

  • Doctoral Scholarship on the Qur’an in European Culture (funded by European Research Council)

まずは気軽に参加!

参加ご希望の方は前日4月7日(水)までにこちらのフォームから参加登録をお願いいたします。当日担当者から折り返しZoomのリンクをお送りいたします。

2期目までは東大本郷キャンパスの教室を利用していましたが、新型コロナウィルス感染症予防の観点から、今期も基本的にオンラインでの開催を予定しています。東京近辺にお住まいの方のみならず、遠方・海外の方もぜひお気軽にご参加ください。

初回はオンラインのワークショップでどのようなことが可能か確かめるとともに、今期の開催でやりたいことやなど基本的な方針を決定しようと思っています。

もちろん、関心はあるけれども予定があわず今回のミーティングに参加できない方も、次回以降の参加でもOKです! みなさんのご参加をお待ちしております。

日本西洋史学会ワークショップ「日本の大学で西洋史学を教える——教室での実践から——」のお知らせ

来る2021年5月15日・16日に開催される第71回日本西洋史学会(武蔵大学・オンライン開催)にて、本会執行部員の高橋亮介さんが企画したワークショップ「日本の大学で西洋史学を教える——教室での実践から——」がおこなわれます。

ワークショップ概要

趣旨説明:高橋亮介(東京都立大学)
実践例の報告:森谷公俊(帝京大学)、八谷舞(亜細亜大学)
コメント:津田拓郎(北海道教育大学旭川校)

本ワークショップでは、大学で西洋史を教えるにあたって、学生に何を伝え、何を学んで欲しいと考えているのか、いかなる工夫をし、いかなる悩みを抱えているのかを率直に話し合い、意見交換することを目的としています。

これまで西洋史学会のシンポジウムでは歴史教育がたびたび取り上げられてきましたが、大学の教壇に立つのを日常とし、あるいは教育に携わる職に就くことを希望する西洋史研究者が実際にどのような授業を行い目指すのかについて、公の場で語る機会は多くありませんでした。また大学ごとに設けられるFD研修では特定の分野に固有の問題を掘り下げることが難しいという問題もあります。したがって専門を同じくする研究者が集まる学会で授業実践について話し合うことに意味はあるでしょう。

西洋史学を学ぶ意義は、学問への熱意を持つ学生たちだけなく、異文化への漠然とした憧れを抱いて教室にやってくる学生、卒業要件という外的な要請から履修する学生たちに対して、どのように説明されるのでしょうか。授業の内容や目的、受講生の学年によって、異なる説明や評価がなされることもあるでしょう。大学教育のなかで様々に位置づけられる西洋史を教えるにあたって、私たちは何を伝えようとし、どのように授業を組み立て、どのような観点から評価しているのでしょうか。

本ワークショップでは、卒業論文執筆を含めた史学科での専門教育、初等中等教育に携わろうとする学生を対象とする教員養成課程、大学で唯一西洋史を学ぶ機会となるかもしれない教養科目の担当者という異なる立場にある教員から日々の実践についてお話しいただき議論の糸口とします。まず『学生をやる気にさせる歴史の授業』(青木書店、2008年)などにより授業実践の紹介と授業改善への提言をしている森谷公俊氏(帝京大学文学部)と、海外留学、高等学校・大学での非常勤講師、助教職を経て、現在講師として西洋史を担当している八谷舞氏(亜細亜大学法学部)から話題提供を、続いて津田拓郎氏(北海道教育大学旭川校)から教員養成課程の事情も踏まえたコメントをいただき、フロアからの意見を募ります。

参加申込

詳細および参加申込は、日本西洋史学会オフィシャルサイトをご参照ください。

第12回 Research Showcase 開催記録

阿部純(12thリサーチ・ショーケース運営委員)

第12回Research Showcaseを2月18日にzoomで開催しました。今回は、当初予定の東北初の現地開催からオンライン開催に切り替えての実施となりました。

今回は日本宗教史分野からの発表者をはじめ、生物学史やタイ建築史、近現代ドイツ外交史、英国現代史からの発表者も集まりました(当日のプログラムはこちら)。司会を東北大学のオリオン・クラウタウ先生が担当し、同じくクラウタウ先生と東北大学のクリントン・ゴダール先生がゲスト・コメンテーターをつとめました。

ゴダール先生はプレゼンテーションにおける重要なポイントを3つに分けて説明しました。第一に、自分の主張を、複数ではなく「1つ」の「大きな結論」として示すことです。オーディエンスの記憶に留めて欲しいことを1つに絞り、それを結論として示すよう心がかけることが重要だと述べました。第二に、先行研究と自分の報告の違いを明確にすることです。報告の方向性をオーディエンスに伝えるためにも、先行研究の問題点と自分の報告の正当性を、最初の段階で述べておくことが重要だと指摘しました。最後に、パワーポイントについて、スライドに多くの情報を詰め込むのではなく、簡潔なものにする必要性を示しました。

クラウタウ先生はゴダール先生のお話を踏まえつつ、日本の学会と国際学会における報告方法の違いをご自身の経験を例に出しながら説明しました。その上でクラウタウ先生が最も強調したのは、プレゼンテーションのイントロダクションで、自分の研究がいかに新しいのか・新規性があるのかを示すことの重要性です。研究の目的のみならず、その研究を行う意義を説明することが必要であり、最初のスライド1~2枚で研究史とその問題点を踏まえておくことで、報告の目的・内容・結論の新規性をオーディエンスが理解できると述べました。

今回のResearch Showcase Prizeには、戦後日本のオカルト言説について報告した東北大学大学院国際文化研究科の韓相允さんが、オーディエンスの投票によって選ばれました。おめでとうございます。

今回も発表者の方々に、アンケートに協力していただきました。以下、その一部を紹介します。

今回の Research Showcase での準備・発表を通して 一番楽しめたこと、苦労したことをそれぞれ出来るだけ具体的に教えてください。

  • 楽しめたこと:普段参加する学会と異なり専門的に違う人達の発表を聞くことができたこと。苦労したこと:原稿の校正や修正。いろいろな方にフィードバックを貰って前日まで細かい修正をしました。
  • 異なる専門分野の研究者に自分の研究のエッセンスを短い時間で伝える機会はこれまであまりなかったため、レビュワーとのやり取りの中で、研究のどこに焦点を当てればわかりやすくなるか、異なる専門分野の研究者はどの部分がわからないのかといった点を学ぶことができたことは貴重な経験となりました。
  • 全てのオーガナイザーが非常に親切で、発表者の気持ちをリラックスさせるよう様々な配慮をなさってくださったことに感謝いたします。楽しめたことは、多くの先生方から多様な観点からアドバイスを頂けたことです。発表者の方々のモチベーションも非常に高く、大いに刺激を受けました。苦労したのはやはり8分以内に、しかも簡潔にまとめなくてはならなかったことです。

Showcaseへの参加は、あなたの今後のキャリアと研究に、今後どのように役にたちそうですか。

  • ほぼ初めての英語発表で、質問の内容はわかっている際も咄嗟の返答の中で英語をすぐに組み立てることができず、日常的に英語を読むだけでなく話す訓練が必要であることを実感しました。今回の機会を得たことで、今後の英語発表に向けた準備等にも意欲的に取り組むことができるように思います。また、原稿のフィードバックについて、二人の先生から、それぞれ異なる視点からご意見を頂けたことがとても役立ちました。また、内容に関する指摘と、プレゼンの形式や方法に関する指摘の双方があったことで、何を意識して発表を行うべきか把握しやすくなりました。
  • 専門的な研究をしていると、専門外の人々は何に興味を持つのか、またプレゼンの前提となる知識をどの程度聞き手が持っているのかわからなくなりがちです。レビュワーとのやり取りの中で、これらの点を学ぶことができました。専門知識のない人々に自分の研究について伝える上で今回の経験は役に立つと思います。

コロナ渦が続く中、前回に引き続き2回目のオンライン開催となったRSですが、当日は皆様のご協力のおかげでスムーズに進み、無事に終えることができました。41名ほどの参加者を得ることができ、Q&Aでは多くの質問やアドバイスが発表者へと寄せられました。司会のクラウタウ先生や質問者が、発表者をエンカレッジしながら具体的な改善案や先行研究の紹介をする場面も見られ、緊張感がありながらも温かい雰囲気の中で刺激的なやり取りが交わされていました。今回のRSが発表者を含め、参加した皆様の今後の研究や教育にとって有益であったならば幸いです。

東北大学のクラウタウ先生、ゴダール先生、茂木謙之介先生、告知に協力してくださった方々に感謝いたします。今後とも、英語での発表スキルの向上や、学際的・国際的交流を目指す全ての歴史研究者の参加をお待ちしています。

史料読解ワークショップ「議事録の内と外を読む」開催報告書

2020年10月2日(金)に、史料読解ワークショップ「議事録の内と外を読む」が開催されました。企画者である峯沙智也さん(東京大学大学院博士課程)を中心としたメンバーによる開催記を以下掲載します。

史料読解ワークショップ開催記

ワークショップの概要(峯)

2020年10月2日(金)に、史料読解ワークショップ「議事録の内と外を読む」が開催された。講師として、飯田洋介先生(岡山大学)と山本浩司先生(東京大学)をお招きし、新型コロナウイルス感染症拡大のもと(Zoom使用による)オンライン会議という形で開催が実現した。歴史学を専門とする私にとって、史料との付き合い方について第一線で活躍中の研究者から学ぶことのできる今回のワークショップを開催できたことは幸いであった。

今回のワークショップでは、歴史学に取り組む多くの人が避けては通れない議事録史料を題材に、学部生から、博士課程、そして社会人に開かれたワークショップにすることを心がけた。参加者をSNS等やホームページで募ると、数時間後には、全国(ヨーロッパからも!)の学生や国際機関に勤務する社会人を含む多様な参加者からの申し込みで枠がほぼ埋まった。

参加者には事前に課題が配布し、各自が当日までに準備を行うこととした。当時のワークショップの構成は、前半が飯田先生による「19世紀プロイセン・ドイツの省庁議事録の場合」、後半が山本先生によるイギリス王政復古期(1660-85)の議会史料を読む」の二部に分かれていた。それぞれ先生の講義の後、グループにわかれて事前課題について議論し、その後に全体での質疑応答があった。

以下の各セッションの内容及び開催方法に関する記述は、企画者である峯と協力メンバー(大下・佐藤・安藤)がワークショップ後に話し合った内容を、峯が加筆修正・再構成したものである。続いて、参加者の声を抜粋して紹介している。開催記の文面を確認いただいた講師の先生に御礼申し上げたい。

飯田先生のセッションについて(大下理世)

飯田先生の事前課題の題材は、独仏戦争(普仏戦争)勃発二日前の1870年7月17日にプロイセン海軍省にて開催された会議の議事録である。ヤッハマン海軍中将、ゴルツ海軍少佐、シュテンツェル海軍大尉に加え、外務省からはクラウゼ公使館参事官がこの会議に出席し、その議題は、アメリカでの軍艦購入による〔海軍力〕増強についてであった。事前課題として出されたのは、①この会議の議題は何か、②この議題に対する発言者の主張をまとめること、③議題に対する発言者の所属する省庁の立場の違いを確認すること、④この議事録をより深く理解するには、他にどのようなことをおさえておけばよいと思うか、というものであり、19世紀のドイツ史の前提知識がない参加者であっても取り組みやすかった。

ワークショップの講義で飯田先生は、P. ガイス/G. ル・カントレック監修(福井憲彦/近藤孝弘監訳)『ドイツ・フランス共通歴史教科書【近現代史】』(明石書店 2016)を引合いに出して史料のカテゴリー(政治的文書、行政文書、法律文書、個人的な文書、文学作品など)について説明した上で、議事録(Protokoll)という史料がどのような性格を持ったものであるかを位置付けた。その際、飯田先生は、議事録の語義を確認した後、そこには議事内容と出席者の発言が記録されるものの、それがどのレベルの会議の議事録か(国会レベルか、官公庁のどのレベルか?公開の有無は?)を確認することが、発言内容やそこでの議論の結果を位置づける上で不可欠であると説いた。続いて、事前課題の題材となった議事録が解説された。この議事録には、戦時に米国で軍艦購入することをめぐって、外務省のクラウゼが米国での中立法の故にそれが困難かもしれないことから、極秘に「シェリハ」という人物に現地調査を依頼することを提案すると、海軍側はこれに同意するとともにイギリスでも調査することを推奨したことが記されている。しかしながら、飯田先生はこの問題をめぐって、この会議以前になされた経緯を紹介し、米国での軍艦調達をめぐって外務省と海軍省の間で意見の相違があったことに触れ、その文脈をおさえてはじめて議事録に垣間見られる両者のスタンスの違いに気づくことができるのであって、議事録からだけでは読み取れないことがあること、すなわち議事録そのものに過度に期待せず、他の史資料と組み合わせて読む必要があるとして、本ワークショップの主題でもある「議事録の内と外」を示した。

続いて行われたグループワークでは、それぞれが事前に用意してきた課題の答えにもとづいて議論を行った。オンライン上での議論ということでGoogleドキュメント上に参加者が用意してきた解答を書き込み、それぞれ口頭でその説明を行った。報告者のグループでは、事前課題に熱心に取り組み史料の歴史的背景についても勉強してきた参加者が多かった。飯田先生の講義とグループワークを通じて、報告者は主に二つの重要な点を再認識した。第一に、「議事録から読み取れること」と「議事録だけでは分からないこと」、すなわち、議事録の内と外を意識する必要があることである。ここでいう「議事録の外」とは、軍艦について、あるいは社会情勢に影響を与えた条約について知識や理解を得るための議事録以外の資料である。第二に、議事録を読む際、発言者の主張がその肩書きと立場によって影響を受けていることを意識する必要がある点である。

山本先生のセッションについて(佐藤ひとみ)

史料読解ワークショップの後半では、山本浩司先生が、イギリス王政復古期(1660-85)に行われたストア川の「河川航行事業」に関する議事録と法案を用いたワークショップを行った。 (事前配布資料、当日のスライドと音声はこちら)

今回のワークショップで提示された史料は以下の2つである。1つ目は、1662年3月に庶民院を通過し、同年に法律として成立したストア川関連法の抜粋である。2つ目は、ストア航行法の成立過程を明らかにするために、ストア川法が庶民院で本格的審議を受けた、一連の審議の議事録史料である。

山本先生から事前に提示された課題は、「ストア川法案と地元住民の権利保護の関連性」や、「ストア川法案の内容は、これまでの1688年の名誉革命に対する一般的理解をどのようなに修正し、改める可能性があるか」というものだった。法案が可決する流れを確認する中で、住民による嘆願書が法案の成立を十分に理解するためには重要であることが伺えた。しかし、今回のワークショップでは限られた史料しか与えられておらず、自分たちが検討している史料を歴史の全体像の中で位置付けることの困難さを感じた。議事録の内容を理解するためには、その外側、つまり議事録で言及されている他の史料や社会的背景の理解なしでは、自分が扱う史料としての議事録を全体像のピースとして認識できないのだと痛感した。

また、今回山本先生が使用された史料は、先生が博士論文を執筆する際に実際に用いた史料である。ワークショップが終わったあと、先生からご自身の研究についての解説があった。そこでは、特に、実際の議会の議事録をどのように理解するかという問題と、その史料が研究史的に持つ意義が何なのか二つの層を意識しながら議事録を読むということについて先生自身の経験を交えたレクチャーがあった。

例えばこれまでの研究では、議会主導で市民の権利保護が達成されたのは1688年の名誉革命で、それが経済発展の基礎となったと考えられてきた。しかし、発見した史料を読む中で、イギリス議会は政治的不確実性に直面していた王政復古期(1660-)から、すでに市民の権利や所有権について意識しており、そのことがイギリスの経済発展を可能にしていたのではないか、という仮説が立てられた。さらに史料を検討していく中で、市民の権利や所有権が保護されていたとしても、それは必ずしも「議会主導」とは限らないのではないか?重要なのは権利保護のタイミングではなく、立法プロセスにおける利害関係者の役割ではないか?という、さらに踏み込んだが問いが立てられた。

新たな問いをもとに史料を検討していく中で、ストア法案に直接関係する院外史料や、議会が同時に審議していた事案、王政復古体制の正当性を提示する源泉——これは木版画に描かれた絵と文書から示された——といった史料が新たに発見された。そして、王政復古期には、絶対王政期のトラウマや、市民からの請願書を駆使した、院外政治による「記憶」の利用があったことが明らかになった。こうして、18世紀以降の運河網と経済発展の基礎となる航行河川の延長は、名誉革命以前の1660年代から、院外からの介入をきっかけとして地元住民権利保護と両立する形で行われつつあったことが示された。

歴史を書くために史料として議事録を読む時、私たちは自分の中にリサーチクエスチョンを立て、その問いを下敷きとしながら議事録を読み、パズルのピースとして全体像の中に位置付けようとする。しかし、山本先生のレクチャーから、問題設定は史料読解を進める中で進化することを学ぶことができた。また、自分が扱っている目の前の問いは、大きな物語を再構成することに繋がる可能性があることを、今回のワークショップを通して知った。しかしそのためには、問題設定や史料を制限してはならない。また議事録を読む際には、多様な史料で補って読むことが重要なのである。山本先生のレクチャーを通して、歴史を書く上で問いを修正する重要さ、議事録を読む際に多様な史料で情報を補う必要性、そして目の前の問いをより大きな研究史の文脈に位置付けることの大事さを学ぶことができた。

参加者のグループ分けなどの開催方法について(安藤良之介)

開催方法を検討した者として全体として振り返ってみると、身分、性別、居住地域、興味関心など、様々な属性の方に参加していただけたと思う。この点に関しては、オンライン開催だったことに加え、山本先生、飯田先生という専門地域・時代の異なる先生に講師をお願いできたのも大きかったのではないだろうか。当日のレクチャーでも各先生で異なる種類の議事録を扱い、異なった切り口から解説を加えてくださり、一参加者として学ぶところが大きかった。また参加者の多様性に応じて、学年・性別の割合がなるべく均等になるようにグループ配分したことも工夫のひとつであった。

参加者の声(アンケートより抜粋)

  • (聞けてよかったこととして)史料を読むときは,まず形容詞を外してSVOだけ読む(という読み方)
    (学部生・フランス史)
  • 議事録と他の資料をどのように組み合わせるか、実際の研究例を通して分析方法を説明してくださったので非常に勉強になりました。
    (学部生)
  • 第一線で活躍する研究者の調査手法(「手の内」)を知ることができて有意義で、かつ刺激を受けました。
    (博士課程・フランス史)
  • 史料を探している時、迷走しているようにも感じるが、新しい史料を見つけながら、質問もブラッシュアップしていく」、という話を伺えて良かった。
    (博士課程・チェコ史)
  • 歴史学のすごさが分かりました。一般人が参加できる歴史学講座で嬉しかったです。
    (社会人・国際機関勤務)
  • 一片の史料から歴史が再構築されていく様子が活き活きと語られた点が非常に良かったと思います。
    (社会人・大学教員)

登壇された講師

  • 飯田洋介先生(岡山大学)
    ドイツ近現代史:ビスマルク外交の再検討。
    著書に、『ビスマルク』中公新書、2015年。『ビスマルクと大英帝国』勁草書房、2010年。
    近著『グローバル・ヒストリーとしての独仏戦争: ビスマルク外交を海から捉えなおす』NHK出版、2021年。
  • 山本浩司先生(東京大学)
    イギリス近世史:エリザベス朝期の時代劇や南海泡沫事件の再検討
    著書に、Taming Capitalism before its Triumph, Oxford University Press, 2018。

飯田先生の著書が1月26日に発売されました。最新の研究で使用された史料をワークショップの題材として提供いただきました。実際にワークショップで使用した史料が、飯田先生のご研究の中でどのように議論されているのか、ぜひお確かめください!

飯田洋介『グローバル・ヒストリーとしての独仏戦争: ビスマルク外交を海から捉えなおす』NHK出版、2021年

企画・運営・司会

峯 沙智也(東京大学総合文化研究科・博士課程・ドイツ近現代史)

協力メンバー

大下理世(東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター・ドイツ近現代史)
佐藤ひとみ(東京外国語大学・博士課程・チェコ現代史)
安藤良之介(東京大学教養学部研究生)

【開催告知】日本史史料英訳ワークショップ第五回「琉球外国関係文書の回」

趣旨説明

日本史史料英訳ワークショップ第五回、「琉球外国関係文書の回」を3月11日(木)に開催します。

中世近代に続き、第五回となる今回は、日本近世史専門の三名の方をお招きします。幕末史専門の後藤敦史氏(京都橘大学)と近世琉球史専門のトラビス・サイフマン氏(東京大学史料編纂所)から、「琉球外国関係文書」所収の阿部正弘「琉球の儀に付応接方大意」という史料の英訳に基づきつつ、近世日本の対外関係と関わる研究史の問題をお話しいただきます。そのうえで、日本近世外交史の視点から、松方冬子氏(東京大学史料編纂所)にコメントしていただきます。

これまでの四回のワークショップでは、日本と英語圏の異なる文化と歴史背景や、一つの史料用語の多面性・多様性により、日本史の史料用語について「完璧な」英語の訳語を見出すのは極めて困難である、という共通了解を育んできました。そこで今回の「琉球外国関係文書の回」では、語句レベルでの訳語の検討を踏まえつつ、そこから一歩進み、日本史史料の英訳がどのように関連研究史の問題に繋がっていくかを模索します。また、スピーカーのトラビス・サイフマン氏には、ご自身が携わっている東京大学史料編纂所での維新史料綱要データベースの英訳プロジェクトについても経験と知見をお話しいただき、既存の綱要英語版データベースを紹介する機会ともしたいと考えています。

開催概要

対象|歴史学、文学、言語学、翻訳学分野を中心とする研究者
費用|無料
使用言語|日本語
場所|オンライン開催(Zoom使用)
日時|2021年3月11日(木)9:30~11:40(日本時間)
検討史料|「琉球外国関係文書」(東京大学史料編纂所所蔵『島津家文書』所収)

スピーカー①:
トラビス・サイフマン(東京大学史料編纂所)
・維新史料綱要と英語圏での利用
・英語圏におけるペリーの琉球訪問研究: 阿部正弘「琉球の儀に付応接方大意」の英訳から

スピーカー②:
後藤敦史(京都橘大学)
幕末日本の対外関係:琉球とアメリカに関わる史料を中心に

コメンテーター:
松方冬子(東京大学史料編纂所)
「日本」とは何か

企画・司会: 黄霄龍(東京大学)

参加申込はこちら(https://forms.gle/KWAL6Thx8D1xsktg6)から。締め切りは日本時間の3月9日(火)正午。参加者には9日の夕方頃に史料の現代語訳と英訳を配り、zoomのリンクを案内いたします。

問い合わせ先:黄霄龍 hxiaolong[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp

【参加者募集】オンラインミートアップシリーズ Coffee Time Series 第4回「研究にまつわる悩みの分かち合い」2/26(金)17:00-

2月26日(金)日本時間17時から、歴史家ワークショップ主催のオンラインミートアップシリーズCoffee Time Seriesの第4回を開催します。本シリーズでは、気軽に研究の楽しさや研究にまつわる悩みを共有し助け合える場を作ろうと、国内外の博士課程に在籍する6名の大学院生が中心となって運営を行なっています。一連のイベントを通じて、孤独に研究する大学院生・研究者が分野を横断して集まることができ、またアカデミアの外にいる方々とも人間的なつながりを構築することができればと願っています。

第4回となる今回は、「研究にまつわる悩みの分かち合い」をテーマに、北川涼太(広島大学大学院)が企画全体のファシリテーションを担当し、Coffee Time Series運営メンバーと参加者の皆さんで「当事者ミーティング」を実践します。この「当事者ミーティング」は、2020年6月に開催した「セルフケア・ピアサポートワークショップ」で紹介・実践したもので、近い立場にある当事者間での問題解決や、各自が実現したいことの手がかりとなる「次の一歩」を見つけるための対話型ワークショップです。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により、思うように研究を進められなかったり、悩みを相談できる人間関係が絶たれてしまった方も多いでしょう。そのため、この「当事者ミーティング」を通して、文献の読み方やメモの取り方など研究・調査を進める際の工夫、モチベーションの維持、研究とアルバイト・仕事、家事・育児・介護とのバランスなど、研究生活の中で生じる幅広い悩みを共有し、解決に向けた一歩を探していきたいと考えます。

当日は、趣旨説明の後に5~6人のグループに分かれ、運営メンバーのファシリテーションで「当事者ミーティング」を行なった後、各グループで得られた気づきを全体で共有する予定です。週末の夕方、コーヒーやお酒を片手におしゃべりに参加してみませんか?

参加を希望される方には後日Zoomのリンクを送りしますので、2月19日(金)17時までに、下記のGoogle Formから参加登録をお願いいたします。

開催概要

日時|2月26日(金)17:00-18:00(「当事者ミーティング」のグループワークと全体での総括)/ 18:00-19:00(都合のつく方で懇親会)(いずれも日本時間)
場所|オンライン開催(Zoom使用)
費用|無料(各自でポストイットかメモ用紙を5枚、お手元にご用意ください)
定員|30名
グループワークのファシリテーター(第4回Coffee Time Series運営メンバー)|赤﨑眞耶市川佳世子大津谷馨纓田宗紀北川涼太篠田知暁藤田風花槙野翔安平弦司

※Coffee Time Seriesでは参加者全員が安心してオープンに悩みや考えを共有できる場づくりを目指しています。今回のイベントでは、原則的にZoom上でビデオをオンにしてご参加いただけますようお願いします。なお、当日の録画や写真撮影などは行ないませんので、ご安心ください。

※イベント(「当事者ミーティング」のグループワークと全体での総括)は1時間で終了しますが、その後、都合のつく方で1時間程度の懇親会を予定しています。懇親会は、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使った少人数によるフリートークを予定しています。途中退席していただいてもかまいません。

参加登録

こちらからお願いいたします。

参加登録締め切り:2月19日(金)17:00(日本時間)
※定員に達した場合は早めに締め切ります。参加登録後にキャンセルされる場合は、早めに下記アドレスまでご連絡ください。

北川涼太(企画担当)
赤崎眞耶(参加登録担当)