去る7月27日、スキル・ワークショップ「歴史地図を描く —研究発表に使える作画法—」が開催されました。その内容について、参加者の北川涼太さん(広島大学)にレポートを執筆していただきましたので、以下に掲載します。

趣旨説明

2021年7月27日(火)の19時から、スキル・ワークショップ「歴史地図を描くー研究発表に使える作画法ー」がオンライン形式で開催された。研究報告や論文執筆に際して、当時の状況を示した地図を利用しなければならない、あるいは利用したいと思うことは多い。しかし自分のニーズに合った地図を見つけ出すのは困難であり、だからといって手書きで作成するとしても、膨大な手間と時間がかかってしまう。

今回、講師を務めていただいた衣笠太朗先生(秀明大学)は、著書『旧ドイツ領全史ー「国民史」において分断されてきた「境界領域」を読み解く』(パブリブ、2020年8月)執筆時に、こうした歴史地図をめぐる問題と向き合うこととなった。衣笠先生は歴史地図や製図の専門家というわけではなく、試行錯誤の末、インターネット上のフリーデータとフリーソフトを用いて歴史地図を作成するという方法にたどり着いたのである。

ワークショップの概要

ワークショップは、レクチャー編と実践編と2パートから構成された。

まずレクチャー編では、衣笠先生が30分ほど、デジタルを用いた歴史地図作成のプロセス、とくにその際使用するフリーデータとフリーソフトについて説明された。デジタルで歴史地図を作成するメリットは、地図の加工・編集が容易なことである。手書きであれば、下敷き地図やトレーシングペーパーなどを用意しなければならず、完成までに数多くの工程をこなさなければならない。そしてやっと仕上がった完成品も加工がしづらい。それに対してデジタルでは、インターネットから編集用のフリーソフトとフリーの地図データを入手することができ、自由に変形したり編集することが可能で、さまざまな形で利用することができる。しかも、作業に使用するパソコンは、とくにスペックが高くなくても問題ない。歴史地図作成のために、専用の作業環境を整える必要がないのである。

具体的なプロセスは、フリーの白地図データと、その下敷きとなる歴史地図のデータをダウンロードした後、フリーソフト上で両者を重ね合わせ、下敷きの地図から白地図へ必要なデータ(地形・境界線・都市など)をトレースしていくことになる。その際、使用する白地図のデータはベクター画像でなければならない。ベクター画像であれば、画像を縮小・拡大・変形したとしても乱れることがない。

そして実践編では、1時間程度の時間をとり、16世紀神聖ローマ帝国の歴史地図を実際に作成した。参加者は、衣笠先生の作業の様子を見ながら、気になった点を質問したり、自分の手元で同じ地図作りを体験することができた。レクチャー編で基本的な流れが説明されていたとはいえ、いざ地図を作るとなると、いろいろな細かい問題に出くわすこととなる。この実践編では、そのつど疑問点を質問しながら、歴史地図が作成されていく過程を確認、あるいは実際に体験することができた。

参加者の意見(アンケート結果より)

よかった点

  • 口頭での説明に加えて実際の作業の様子を見ることができ、地図作成プロセスのイメージを持つことができた。
  • 掛け合いで進む方式のため、一人がまとめて講演するより、飽きることなくわかりやすかった。
  • 地図作成は教員の仕事(授業資料やテスト作成など)でないと困る技術だが、直接情報を得ることが難しい。今回の企画はまさに「かゆいところに手が届く」企画だった。

気になった点

  • 実践編で、細かい作業に集中していたら、全体でどの作業について説明しているのかわからなくなってしまった。チャットで、現在どの作業について説明しているのか知らせてほしい。
  • 未経験者に2時間半(休憩無し)はしんどく、途中で集中が切れてしまった。
  • 衣笠先生が紹介された方法より、もっと効率的なやり方がある。そちらについても紹介してほしい。

企画・司会:吉田瞳(京都大学大学院文学研究科博士後期課程・ドイツ中近世史)
執筆:北川涼太(広島大学・博士課程後期)