第2回歴史家ワークショップ報告:Research Showcase in British History (2016.7.28)

第2回ワークショップとして開催されたResearch Showcase in British Historyでは、若手イギリス史研究者8名に、それぞれの研究テーマについて、8分という短い時間で、専門を共有しないオーディエンスにコンパクトに伝えもらい、全体で討議しました。報告と質疑ともに英語で行ったということもあり、新鮮みのある会になったと思います。報告者は全員英語を母語とせず、今回初めて英語で口頭報告するという人も多かったのですが、積極的に参加してくれました。参加者は全体で約20名と主催者の予想を上回り、活発な議論につながりました。当日報告者に対し、今後もより良いワークショップを企画・運営できるよう、アンケートを実施しました。以下、回答から内容を一部紹介します。

準備と発表を通して楽しめたこと、苦労したこと

楽しめたこと

  • 英語での発表それ自体を楽しむことができた。
  • 研究のアイデアを深めていく良い機会になった。
  • 英語を用いていかに「わかってもらうか」を工夫するのが新鮮だった(議論の構成や、パワーポイントの利用の点で)。

苦労したこと

  • 自分の話をするよりも、人の話を理解する方が難しかった。
  • 時間内におさめるのに苦労した。
  • 英語での質疑応答。

Research Showcase への参加が今後のキャリアと研究にどのように役に立ちそうか(一部抜粋)

  • 「英語で人々の前でやるという経験自体が役に立つと思います。また、今回感じた課題を活かすのも、いつもの研究発表よりも新鮮なものだっただけに、可能だと感じます。」
  • 「修士課程の段階で英語のプレゼンを経験できたこと、ひいては英語圏形式の学会の雰囲気を味わえたことは、今後の研究生活で避けては通れない英語での学問的コミュニケーションに対する心的障壁をなくすことができた点で大変有意義でした。」
  • 「日本の大学に在学していると、英語で質疑応答する機会はほとんどありません。今回のように緊張を持っての質疑応答を繰り返すことで、英語での質疑応答に対するアレルギーを取り払うことができると感じました。」
  • 「短期的には、博士課程進学後の留学へ向け、英語での発表能力を向上させること。また長期的には、他の若手研究者の方々の発表を聴いたり、自分に対する質問、さらに発表後の意見交換などを通じ、今後の学究・研究の視野を広げていく助けになったことが、大きな収穫だったと思います。」
  • 「自分の研究分野に関心を持つ研究者(特に、グローバル・ヒストリー関連)が多くいるであろうことを認識できた…今後は積極的にプロジェクトなどに参加していけたらと思います。それもあって、留学先の決定にも良い影響がありそうです。」
  • 「いずれは私自身も、何らかの形で貢献する側に回れれば幸いに思います。」

今後、歴史家ワークショップに期待すること。

  • Showcase among Ph.D holders
    主に博士号取得者を対象とした「競争」的な側面を持つ英語の発表を観戦してみたい(競争の方法として、例えば、オーディエンスによる投票)。イギリスでは一人前と認められてからも競争があるため、高水準の研究のプレゼンを英語で聞くことができるのは修士・博士課程の学生にとっても有益な経験になると思う。
  • カンファレンス
    特定のテーマに沿ったペーパーを集めるというconference形式に則った会が行えるとよい。そのテーマと自分の研究との関係も考えられるし、新たな切り口も見つかるかと思う。
  • 英語での学際的な交流の機会
    他の学問分野で歴史に関わるもの、政治学・経済学・社会学などの研究発表を聞く機会があっても面白いかもしれない。専門外の人にどう伝えるか、というのも重要なスキルだと思う。また、そうした異なる分野の研究者とのネットワーキングも重要であるはず。
  • ライティングスキル
    学術的な文章作成を学べるようなワークショップ。自分の英文にどのような傾向の問題点があるかを学んだり、英語での学術的文章作成のコツや、自習するのに役立つライティングの参考書を教えてもらいたい。

まとめ

ワークショップ後の懇親会も非常に盛況で、質疑応答の延長戦が行われるだけでなく、論文・モノグラフの出版や留学についてなど様々な話題が飛び交いました。本ワークショップの企画・運営者 として、報告者だけでなく参加者全員がそれぞれの研究を振り返り、さらなる発展を展望するための貴重な機会となったのではないかと思っております。 (正木・山本)

**第三回歴史家ワークショップは京都にて開催されます(8/28締切, 9/8開催)。詳細はこちらです。