2019年2月14日に大阪大学で第7回Research Showcaseが開催されました。大阪での開催は初の試みとなりました。
(Research Showcaseの過去の開催についてはこちら)
ドイツ中世史および近代史、プロイセン史、イギリス近世史、日本近代史、科学史、経済史をそれぞれ専門とする計7名のスピーカーに、8分間のプレゼンテーションをしていただいたのち、7分間の質疑応答を行いました。当日は、いずれも京都大学講師で経営史がご専門の久野愛さんとアイヴィンス・スティーヴンさんが司会進行役を務め、参加者は30名程度と盛況で、活発な議論がおこなわれました。Research Showcaseは、将来自信をもって国際的な舞台に立つことができるように、若手の段階から国際的なセミナーの雰囲気を体感できるような場を提供することを目的のひとつとして掲げてきました。当日のフロア全体でのディスカッションの様子からは、発表者と参加者双方にとって、英語による質疑応答の訓練の場としても効果的に機能していると思われました。
当日は、オーディエンスの投票により、発表内容や構成・議論の進め方等に基づきResearch Showcase Prizeの受賞者が選ばれました。栄えある受賞者は、イギリスの下院における奴隷貿易廃止反対派について発表された、大阪大学大学院文学研究科修士課程2年の森井一真さんです。今回のオーガナイザーの1人である大阪大学教授のピエール=イヴ・ドンゼさんから、賞状が授与されました。森井さんは、奴隷貿易反対派の政治的・経済的背景や利害関心を、スライドを効果的に用いつつわかりやすく提示しておられ、専門外のオーディエンスにも研究の内容とその意義を明快に伝えられたことが受賞につながったと思われます。
今回発表されたスピーカーの方々には、後日アンケートに回答していただきました。
以下では、その内容をご紹介します。
準備と発表を通して楽しめたこと、苦労したこと
楽しめたこと
- 少ない時間でいかにクリアに論点を提示できるかを考える工程がもっとも楽しめた。
- 全体的に発表者をサポートしようとする雰囲気のなかで報告できたこと。
- どういう風に自分の議論を構成し、見せる(魅せる)か考えること。
苦労したこと
- 8分の枠に収まるように自分の研究を要約し、かつ説得性を持たせること。事例を入れれば時間を超えてしまい、概要だけでは説得的とならないというジレンマ。
- 自分と専門分野を異にする人に伝わるように、基礎情報を入れつつ、なおかつ簡潔に議論の筋道を紹介出来るように原稿を書くことは苦労した。
- 当日の質疑応答。
Research Showcaseへの参加が今後のキャリアと研究にどのように役に立ちそうか
- 「人前で発表する際に、心の落ち着きを手に入れる感覚と、「緊張をうまく利用する」感覚をつかむ良い訓練になった。原稿へのフィードバックは、他の人がどのように読むのか知る良い機会だった。また、二人からコメントを得られたのはよかった。二人とも指摘していたり、片一方の方のコメントがすごく参考になったりした。」
- 「もっとも直接的には、自分の研究を英語で伝える際の表現方法を知ることができたことです。とくに添削で、おかしなところを修正していただくことで、他の人にも理解してもらえる英語表現をまとめて手元に残すことができました。〔…〕特に、数量的なデータを示すための表現は内容が変わっても応用が利くストックとなりました。また、「挨拶→イントロ→結論→ボディ→結論→挨拶」といった英語報告の型を経験することができたので、次の英語報告の機会に踏み出しやすくなりました。〔…〕」
- 「〔…〕別の研究会で報告の機会をいただけたりしたのが直接的な影響。まわりの英語力が非常に高く、語学への危機感が出たのが一番の収穫。」
まとめ
初めての大阪での開催は、皆さんの活発な議論により成功の裡に終えることができました。
報告者全員がこの日のために入念な準備を重ね、今後の進展が楽しみになるような興味深い報告を聞かせてくださいました。
また、学生も含め広くフロア全体から質疑の声が上がったことは、我々運営側としても嬉しい限りです。
今回の大阪での開催は、これまでの歴史家ワークショップの活動に共感してくださった関西方面の方々の協力により実現しました。
今回の成功を踏まえ、関西では早速次のワークショップの計画が始まっています。歴史家ワークショップの活動を支える輪はますます広がりを見せています。
その期待に応えられるよう、今後も様々な企画を打ち出していくつもりですので、応援をどうぞ宜しくお願いいたします。
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