2019年10月Research Showcase (京都) 開催レポート

第9回は10月11日に京都大学での開催でした。2月の大阪大学での開催の成功と皆様の要望を受けて、今年二度目の関西での開催を実現することができました。

台風19号の影響で遂行できるかどうか不安もありましたが、遠方からの報告者の発表順番の調整や、旅程の変更に伴う旅費面でのサポートなどの運営委員による対応と、参加者の熱意と協力のおかげで無事に開催でき、しかも33名の参加という大盛況でした。

今回は、日本近代史、日タイ関係史、イギリス史、西洋美術史、中国現代史などさまざまな分野にわたる7名の発表者が集まりました。司会は京都大学のスティーブン・アイビンス(Steven Ivings)さんと久野愛さんが担当し、名古屋大学のネイスン・ホプソン(Nathan Hopson)さんがゲスト・コメンテーターをつとめ、質疑応答に関するノウハウなどについてアドバイスしました。

今回のResearch Showcase Prizeは、前回の東京RSと同じく、同点一位で趙雅萌さんと水野良哉さんの二名の発表者が選ばれ、ゲスト・コメンテーターのホプソンさんから賞状が授与されました。

今回も発表者の方々に、アンケートに協力していただきました。以下、一部を紹介します。(アンケート内容より抜粋)

■ 準備と発表を通して楽しめたこと、苦労したこと
【楽しめたこと】
・会終了後に他の発表者と発表内容について議論したことは非常に楽しいと感じた。今回の発表者は自身のフィールドと離れた研究者の方も多く、その視点は新鮮かつ参考になった。
【苦労したこと】
・英語に苦労したのはもちろんですが、8分という限られた持ち時間かつ必ずしも前提知識を共有しない聴衆を前にしていかに「伝わる」発表原稿を作り上げるかということです。逆にそれが醍醐味でもありました。

■ 今回の Research Showcase で学んだこと(例えばプレゼンや準備の方法などについて)
学術報告において、語学の壁を必要以上に感じない方が良い、という事であろうか。たしかに自身を振り返れば、当日は他の報告者の語学力に圧倒され、質疑応答も満足にできたとは言い難い。逆にいえば、その程度の語学力でも、しっかりと準備すれば、報告を完遂できる。
・発表原稿やパワーポイントを直前まで粘って作成するのもいいが、必ず発表のリハーサルをしておくこと。身振りやジェスチャーも交えて。
・発表の中で少しでもいいから史料を見せることです。歴史学の研究のなかで史料は重要であることは言うまでもありません。たとえ、英語で表現することが難しいとしても、史料を提示して、「史料にはこう書いてあるから、このように解釈することができる」という議論を組み込んで発表したほうが、説得力を持って相手に伝えることができる。

まとめ
今年二回目の関西での開催となったRSは、京都大学の皆さまのご協力のお陰で、盛況のうちに終えることができました。京都大学の久野さん、Ivingsさん、金澤さん、そして告知にご協力いただいた皆様に感謝いたします。Research Showcaseは首都圏を超えて全国に広がりつつあります。次回は、2020年2月18日に名古屋大学にて開催予定です。はじめての名古屋での開催となります。Call for Papersは近日公開予定です。ご期待ください!

2019年8月 Research Showcase (東京) 開催レポート

第8回Research Showcaseが8月1日に東京大学で開催され、7名の発表者と31名の参加者を得ました。 大阪大学のピエール=イヴ・ドンゼ(Pierre-Yves Donzé)さんをゲスト・コメンテーターに迎え、慶應義塾大学の市川佳世子さんが司会を務めました。当日はオーディエンスによる投票で、米倉美咲さんと山田智輝さんが同率一位でResearch Showcase Prize受賞となりました!

当日のスピーカーの皆さんにお答えいただいたアンケートより、ここでは準備と発表を通して楽しめたこと・苦労したことについて内容を一部紹介します。(アンケート内容より抜粋)

【楽しめたこと】
・一番楽しかったことは、所属する大学とは異なる離れた場で開催されたResearch Showcaseに参加することで、さまざまな専門性を有する、初めて会う人たちばかりに対して自分の研究について発表し、たくさんの質問やコメントをもらえたり議論したりできたことです。
・ 最も楽しめたのは、添削者とのやり取りと当日の質疑応答だったように思う。自分一人では上手く表現出来なかったことを、添削者の方に相談することによって、シャープな英文へと昇華出来た瞬間は、納得感と達成感とで興奮した。
・ 楽しめたことは、この機会に新たに知り合った先生方や院生仲間から有意義なフィードバックを発表前後ともにもらえたこと、若手研究者をエンカレッジする(良い意味で堅苦しくない)雰囲気の中で準備・発表を行えたことです。

【苦労したこと】
・オーディエンスを置いてけぼりにしないで、彼ら/彼女らの理解を伴いながら発表を進めるストーリーラインを構築するのに四苦八苦した。当初の原稿は、研究テーマのコンテクストや概念の定義を逐一定義していけば、誤解や混乱はないだろうと考えて作成したが、それが却って議論の流れをぶつ切りにしていると指摘された。そこで論文のような厳密さよりも、まずはオーディエンスと発表を進行するために必要な情報だけに絞って、欠けている曖昧な部分は想定質問を設定して対応するようにした。

まとめ
8回目となった今回のRSには、助成をいただいている東京倶楽部事務局の保坂英博様をお招きし、激励のメッセージをいただきました。どの発表も素晴らしいものでしたが、受賞者の米倉さんと山田さんの発表は、明確な論点とその意義を力強く押し出した説得力のある構成が評価されたようでした。全ての発表が終わった後に、ゲスト・コメンテーターのドンゼさんから発表の仕方についてアドバイスを頂きました。今回の発表のテーマの多くは西洋史に関連していましたが、当日のオーディエンスの中には、日本経済史、日本近世外交史、中国経済史、中国哲学など、東アジア関係の分野の方がたくさんいらっしゃいました。今後、アジア・日本関連の発表がより増えることが期待できます。



「バズる(?)アウトリーチのすすめ―公益性のある情報発信に向けて」開催レポート

2019年7月22日に開催したイベント「バズる(?)アウトリーチのすすめ―公益性のある情報発信に向けて」の開催レポートをお届けします。

趣旨と登壇者の紹介については過去の投稿をご覧ください。
2019年7月22日「バズる(?)アウトリーチのすすめ―公益性のある情報発信に向けて」開催のお知らせ

各登壇者の講演

IMG20190722173851
今回はHistorians’ Workshop初の試みとして、講演内容を動画に収めてみました。
動画編集は広島大学D1の北川涼太さんが担当してくれました。(北川くん、本当にありがとう!)
以下、講演内容の重要トピックを箇条書きで列挙しています。気になるトピックがあれば是非動画の方で詳細を確認してみてくださいね!

北村先生の講演「ワイルドならどうする?」


・批評家としての北村先生とTwitter
オスカー・ワイルド:批評=芸術
ワイルドなら絶対にTwitterをやるはず…。
ワイルドみたいに書きたい!Get Wilde!
・ウィキペディア英日翻訳活動
・自身の英語力を活かした社会貢献として
・授業で学生に翻訳を実践してもらう「英日翻訳ウィキペディアン養成プロジェクト」
・多数の団体・メディアから取材を受けるように
・信頼と継続がバズを生む
原稿は絶対に落とさない!

古川先生の講演「美術展覧会に合わせたアウトリーチ」


・展覧会の情報不足を補うものとして、美術展に合わせたアウトリーチ活動を開始
・イラスト入りパンフレットの配布・展覧会ツアーの企画
→団体で動く難しさ/大声は出せない/参加者の層が首都圏に限定
・ネットプリントを活用
→全国の人がガイドを楽しめるように
・団体との共催で規模アップ
・情報発信とリスク管理
・込み入った説明にTwitterは向いてない(誤解を生みがちに…)
・長文はブログで発信
・原稿の下読み依頼や下書き保存の活用で不必要な炎上を回避

丸尾氏の講演「ちょっと輝きが足りない『鈍重な自己啓発』のすすめ」


・バズる記事の共通点(田野大輔先生の記事を例に)
1)新事実(「ナチスの体験授業」という突飛さ)
2)新解釈(「全体主義は容易である」)
3)実存に根差した共感(「自分もこうなり得る」「身近にも全体主義の萌芽があるかも」)
≒鈍重で持続可能な自己啓発
・「実存に根差した共感」から、読者が自らの環境を操作可能・変更可能なものとして認識できるように…アウトリーチの公益性
・たぶん編集者はめっちゃTwitter見てる(からどんどんツイートして!)
・情報発信において、一番大事なのは覚悟では?

質疑応答

質疑応答は、参加者の皆さんのおかげで非常に活発なものとなりました!

Q. アウトリーチの意義、若手がすることの意義
A. 専門分野を残すために良き受容者を育てたい。教養よりのコンテンツを潰そうとする人がいるが、そういう人はそのコンテンツが流行っていることに気づいていない。可視化が重要。
A. そもそもアウトリーチを活発化する必要があるか解らない。自分の場合は専門分野を愛する気持ち、専門外の人々に自分が面白いと思うものを布教したい気持ちが強かったからアウトリーチを始めた。愛が持たれていない分野は自然淘汰されると思う。
A. アウトリーチが評価される空気を醸成していきたい。

Q. どのような研究者がアウトリーチ向きか
A. 一般向けの文章が書ける人。アカデミアと社会を分断しないバランス感覚が必要。
A. 研究者本人が面白い人かどうか。
A. 〆切が増えることを考えると1日にたくさん書くのが好きな人。

Q. どう炎上やクソリプに対応しているのか
A. (クソリプラーをブロックすることなく真面目に対応することについて)相手に伝わるかではなく、TLを見ている学生に「やな事言われたら言い返していいんだ」と伝えるため、あえてまともに反応している。「反論することは寧ろカッコいいじゃん」という空気を作りたい。
A. そもそも意見を表明するタイプのツイートをしないようにする。ブログ記事については間接的批判はありうるが、直接リプは少ないのでスルーできるしスルーする。

Q. アカデミズムは「バズ」とどう関係すべきか
A. 人々が関心を持っていることがバズるわけで、アカデミズムは「バズ」トピックについて学会をやるべき。テレビが生んだバズについても、学会がすぐにセミナーや雑誌の特集を組むのが望ましい。ただ学会に「目利き」がいないとこれらは実現しえない。
(例)TOKIOを知らないとTOKIOが発端のバズはアカデミックなことであれ学問に繋げ得ない
A. とはいえ若手が以上の活動を大きな学会に提案するのは難しい。オンライン上に流行に聡い研究者が集まれる場があればいいのだが。
A. ウェブ媒体で記事にすること自体がバズのフォローである。ウェブでは同じことが繰り返し議論される傾向があるので、ウェブ記事が何度も参照されるストックとして機能しうる。

Q. 意図した層とは違うファン(ノイジーマイノリティなど)が発生して、その結果、優良なファンがいなくなってしまうこともありえると思う。セルフブランディングって成功しているか?
A. ターゲッティング自体に違和感ある。ターゲティングをすると内輪になりやすい。それよりかは訳が分からない人がいた方がよい。今の社会の問題が内輪化にあるので、もっとマスに届いて欲しいと考えている。
A. >ファンが欲しくてやってるわけではない。強いて言えば高校生や学生に見てもらいたい。女性研究者にたいし、顔が出たとたんに猥褻な画像を送ってくる人がいるが、それはセキュリティ案件にするしかない。

Q. 自ら主体的に発信してこなかったSNS初心者へのアドバイスもお願いしたい。
A. 全員がSNSでアウトリーチを行う必要はない。書いた論文を再利用可能な形でウェブに出すだけで十分意義がある。利用可能な形でウェブ上に論文があれば、他人がそれを拾って記事を書くことも出来る。また、ciniiから論文本体が手に入れば編集者がそれをもとに記事依頼を送ることもできる。
A. 編集者にはウォッチャーが多い。専門書と現代社会の繋がりを示すような読書日記やツイートがきっかけでアウトリーチが生まれることもある。
A. 数人グループでのアウトリーチも可能。得意分野によるタスクの分担ができる、個人の見解を相対化したうえで発信することも可能。

参加者の反応

最後に、参加者の皆さんのご意見・ご感想を紹介したいと思います!
まずはアンケート結果から↓

・北村先生がきっかけで文学研究に関心をもち、映画や演劇を批評する楽しさを知った。もともと海外作品の需要層を広げ日本に紹介される作品が増やすことに関心があったため、今回アウトリーチについてお話を拝聴出来て良かった。
・おそらく自分より10~15才若い研究者・出版関係者が、自分とは異なる情報空間のなかで何を考えどんなことをしているのか具体的に分かったのが非常に面白かった。自分が大学院生だった頃よりもアカデミアは社会に近く、いままでに様々な試みがあったのだろう、と実感することができた。一方、炎上への(過剰な)危機意識の高さも感じた。昔は炎上してナンボくらいだったような気がする。
・今回のイベントを通じてアウトリーチのノウハウや心構えなどを学ぶことが出来、非常にためになった。特に、研究者と編集者の2つ立場から話を聞けたのが良かった。このイベントの続編があれば是非参加したい。ライブ配信などでもっと公開されるといい。
・とても刺激的で勉強になり楽しかった。アカデミアと一般をつなぐ、まさに今問われているアクチュアルなテーマでとてもわくわくした。また、活発なディスカッションが出来てよかった。時間配分なども含めとても纏まりが良かった。
・自己流でアウトリーチを行うと独善的になりがちで、炎上のリスクも大きい。今回、第一人者の先生方からノウハウを伺えたのが良かった(特に教員として安心した)。個人的には丸尾氏が仰るところの「覚悟」を持つのに疲れた節がある。
・アウトリーチ自体について多角的に考えることが出来て良かった。
・なかには慎重な発言もあったが、若い人に手放しで勧められるのかが気になった。主張や議論が粗くなりがちなので、専門家としての評価が定まらないうちはリスクもあるのではないか。

今回、「#バズるアウトリーチ」のハッシュタグをつけて、Twitter上でも皆さんからご意見を頂戴しました。
そのツイートをTogetterの方にまとめています。そちらも是非ご覧ください!
https://togetter.com/li/1379599

おわりに

IMG20190722205917
文系学問への風当たり、社会との溝、情報化社会に埋もれる良質な知、ベテラン研究者との世代間ギャップ…こうしたことへの危機感から、アウトリーチの意義や学術の社会への繋ぎ方を考える場を若手主導で設けたいと、今回のイベントを企画しました。
単に「文科省が推奨するからやる」のではなく、「先輩方に牽制されるからやらない」のでもなく、まず自分たちで考えなくてはならないだろうと。

今回のイベントを通じて、登壇者のお三方からフロアの皆さんまで、たくさんの方々から多様な意見を聞くことができ、企画者自身としましては、今後の活動のヴィジョンを以前よりずっと明確にできたと思っています。ご参加くださった皆さん・今これを読んでくださっている皆さんもそうであれば、企画者として嬉しい限りです。

また、上記の通り企画の動機は危機感によるものでしたが、皆さんの意見を聞く中で、自分の意見を主張したい、専門を活かしたい、好きで究めてきたものを知ってほしいといった純粋でポジティヴな意欲の大切さにも改めて気づかされました。
自分も楽しく受け手も楽しい――そんな理想的なアウトリーチの形を目指したいものです。

ありがたいことに、第2弾を期待する声もちらほらいただいています。
今回のイベントでは、質の問題についてあまり掘り下げられなかったと思うので、それについてやるのが一つかなと思っています。
丸尾さんの講演でも触れられていた、情報を「残念なもの」にしない努力や、アンケートにもあらわれている、若手の未熟さからくる質への懸念については、こういったイベントの場でこそ深く検討すべき点だと思います。
他にも、テーマや登壇者について希望があれば、是非運営委員までお聞かせください!

最後になりましたが、今回の登壇依頼を快く引き受けてくださり、有益な情報を提供してくださった登壇者のお三方、平日にも関わらず会場まで足を運び、活発に議論してくださった参加者の皆さま、円滑な運営をサポートしてくださったHistorians’ Workshop内外の全ての方々に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました!

文責:吉田瞳・中辻柚珠

史料読解ワークショップ開催レポート②

*こちらは史料読解ワークショップ開催レポートの後編です。前編はこちら。

大学院生対談 —史料読解ワークショップに参加して—

◇問題意識と参加のきっかけ

中山:ワークショップを企画し、当日の司会を務めさせていただきました、東京女子大学修士に在籍している中山恵と申します。ドイツ近現代史の中でも、ヴァイマール共和国時代の戦死者記念について研究しています。ワークショップの企画をした動機は、学部時代、卒論を書くまでに、史料を実際に読んでみたり読み方を学んだり考えたりする機会がなかなかなかったことに気付き、これから修論を書くに当たって勉強したいと考えたからです。個人的に、ぜひ藤野裕子先生と小野寺拓也先生から史料に関するお話を伺いたくて、ワークショップへの登壇をご依頼したところ、ご快諾いただき企画が実現しました。

今回はワークショップを振り返るために、記事の執筆にも協力をいただいた同じく大学院生の浅井さんと奥田さんをお招きして対談の場を持ちました。本日の対談はちょうどワークショップ開催から1か月後となりましたね。それではまず、お二人にワークショップに参加した動機を伺いたいです。

Continue reading “史料読解ワークショップ開催レポート②”

史料読解ワークショップ開催レポート①

* こちらは史料読解ワークショップ開催レポートの①前編です。②後編へのリンクはこのページの最後にあります。

趣旨説明

文責:中山恵(東京女子大学修士1年)

2019年7月8日、「史料読解ワークショップ」を開催いたしました。

歴史学研究において避けては通れない、いや醍醐味でもあるといえる一次史料の読解と史料批判。しかし、歴史学を学ぶ学生にとっては、史料読解や批判に関する学びや訓練の場は必ずしも十分とは言えず、特に専門分野を横断しての、史料へのアプローチ方法の共有や議論の機会はこれまで少なかったのではないでしょうか。そうした問題意識のもと、史料読解について日本史からは藤野裕子先生、ドイツ史からは小野寺拓也先生からお話を伺い、参加者のみなさんと議論することで、専門性を掘り下げるだけでなく領域横断的にも知見を得られる場を作りたいと考え、今回のワークショップを企画しました。

まず、藤野先生と小野寺先生に対談形式でお話しいただき、その後、藤野先生と小野寺先生のワークショップへ移りました。そして実際に史料の読解と解釈にも取り組みました。藤野先生のワークショップではその場で初めて配布された史料を読み、小野寺先生のワークショップでは事前課題として読んできた史料に関する問いの答え合わせと、「問いを立てる」作業にそれぞれグループごとに参加者のみなさんと取り組みました。

今回、大学院生から教育機関ないし在野の研究者、高校の教職員といった、一分野の研究者に限らない幅の広い層の方々にご参加いただきました。その様子を以下に、それぞれ簡潔にではありますがご報告いたします。

Continue reading “史料読解ワークショップ開催レポート①”

8/28「西洋経済史・経営史のこれまでとこれから」開催リポート

本会運営委員でもある東京大学経済学部の山本浩司氏による入門セミナーが2019年8月28日に開催されました。情報過多の時代に、なぜ敢えて西洋経済史・経営史について時間を割く必要があるのか?ネットや新書で十分な情報は手に入らないのか?本セミナーでは、専門知識を前提することなく、日本語圏の情報からでは容易にアクセスできない西洋経済史・経営史の「知のフロンティア」を共有することを目的とし、講義とグループディスカッションを行いました。

当日の様子を参加者の一人、田端俊也さんが当日の様子をメモにしてくださいましたので、リポートの代わりとして共有いたします。グループディスカッションもおおいに盛り上がった様子が伝わるのではないでしょうか。

https://docs.google.com/document/d/12maj8pv852DcTiUJNcwhvGUQCygLB1M9WSIo30Ym9hE/edit?usp=sharing


歴史家ワークショップでは、今後も歴史研究者の社会発信活動を企画していきたいと考えています。企画アイデアをお持ちの方は、コンタク・フォームを使用するか、直接運営委員までご連絡ください

2019年5月19日「ワークショップ:国際発信とキャリア形成」開催報告

趣旨説明・概要

2019年5月19日、第69回日本西洋史学会大会で「ワークショップ:国際発信とキャリア形成」を開催しました。本企画は、西洋史研究者の国際的な研究活動の実践と、それに付随するキャリア形成のあり方について、参加者による討論を通じて現状の把握と問題点の共有を目指すものでした。近年ますます盛んになる研究の国際化は、研究者自らが望むものであると同時に外部から要請されてもいます。また日本語での研究発表や論文・書籍の執筆、大学での教育や社会への発信といった活動の重要性が減じているわけでもありません。このような多種多様な活動をすることへのジレンマは、世代を問わず共有されているのではないでしょうか。

こうした問題の解決は容易ではありませんが、問題が個人的なものであると同時に構造的なものだと捉えるならば、各人がそれぞれの立場から何を具体的な問題として何に価値を見出しているのかを学会という公の場で話し合い、共有し、可視化することには意味があるでしょう。そこで、なんらかの規範的な結論を求めることなく、異なる立場・キャリアの段階にある人たちが自由に話し合うワークショップの機会を設けました。まず近代フランスの科学技術史を専門とし学問と大学のあり方の歴史にも詳しい隠岐さや香氏に、ご自身の経験に基づく問題提起・話題提供を議論のきっかけとしてしていただき、続いて「システム✕デザイン思考」による問題解決手法の開発と実践に携わる鳥谷真佐子氏をファシリテーターとしてグループワークを行いました。

 

隠岐氏による問題提起・話題提供

IMG_1031

隠岐氏の報告では、科学技術史の研究者としての立場から、日本語、フランス語、英語といった多言語での研究発表のペースと内容の違い、英語圏、フランス語圏、日本以外の東アジアの国々の研究者と日本人研究者の研究発表・内容のスタイルの違いなどが指摘されました。また国立の総合大学・研究大学に所属する立場から、人事や予算獲得において研究業績を定量的に評価する圧力が高まっていることや、理系をはじめとする非専門家に研究内容を届ける必要性と、その難しさも言及されました。

 

ワークショップ

IMG_1040.jpg

4つのグループに分かれて「国際発信とキャリア形成にはどのような問題があるか」というテーマでディスカッションを行いました。「因果ループ」という手法を用いて、研究者自身および研究者が関わる人々・組織による、さまざまな活動がどのように結びつき、どのような影響を持つのかを因果の関係性を表す図で示していきました。研究者自身を取り巻く環境と活動を規定する様々な要因を俯瞰するとともに、グループで話し合うことで、一人一人が見えてこなかった事柄に気づいたり、簡単に因果関係として捉えられない現象があることに気づきました。

最後に各グループが発表を行いましたが、共通して見られたトピックに、日本語と外国語での研究発表をするための時間・労力の振り分け、研究活動と社会との関わり、ライフワークバランスなどが解決していくべき問題として浮かび上がってきました。

IMG_1069

 

参加者の意見(アンケート結果より)

【得られたこと】

  • 現在日本の西洋史学が置かれている状況を客観視できた。ある課題は共有することで細分化され、解決の糸口が見つかると学んだ。
  • 海外で活動してきた人と国内で活動してきた人の間で対立があるかと思ったが、問題意識の共有がされていることに気づき勇気づけられた。
  • 異なる立場の方々が、それぞれの立場で学界全体、もしくは社会全体のことを視野に入れつつ考えているのを知ることができた。
  • 世代間のギャップを自覚できた。院生の問題を解決しようとすると有職者にしわ寄せがいき、その逆も然りで、そうした押し付け合いにならない解決策が必要だと感じた。
  • ジェンダーや世代、研究の経歴(海外で博士号を取ったか否かなど)がバラバラの人たちとざっくばらんに話せる機会はなかなかないので、楽しく意見を出しあえて有意義だった。
  • 問題把握のための思考実験が体験できた。

【もっと知りたかったこと、不足していると感じたこと】

  • 国際発信・キャリア形成というテーマでも拡散しがちで、あえてもう少し絞っても良かったのでは思った。
  • 研究者のバイアスが強くかかっていたと感じたので、一般社会・一般読者との関係についてももっと考えたかった。
  • 西洋史などの学部卒業生の進路分野の拡大とキャリア形成にかかわる議論ができなかった。

 

まとめ

今回のワークショップでは、意欲的な参加者に恵まれ、和やかな雰囲気のなかで楽しく議論をすることができました。本ワークショップの開催は、一般財団法人中辻創智社の会議開催費助成により可能になりました。ご支援を賜りましたことに対し、この場を借りて御礼申し上げます。今後も歴史研究に関する類似のイベントの開催を続けていきたいと考えています。アイデアのある方は、運営委員に、または当HPのコンタクトフォームでご連絡ください。

2019年2月14日 第7回リサーチ・ショーケース開催報告

2019年2月14日に大阪大学で第7回Research Showcaseが開催されました。大阪での開催は初の試みとなりました。
(Research Showcaseの過去の開催についてはこちら

7thRS①

ドイツ中世史および近代史、プロイセン史、イギリス近世史、日本近代史、科学史、経済史をそれぞれ専門とする計7名のスピーカーに、8分間のプレゼンテーションをしていただいたのち、7分間の質疑応答を行いました。当日は、いずれも京都大学講師で経営史がご専門の久野愛さんとアイヴィンス・スティーヴンさんが司会進行役を務め、参加者は30名程度と盛況で、活発な議論がおこなわれました。Research Showcaseは、将来自信をもって国際的な舞台に立つことができるように、若手の段階から国際的なセミナーの雰囲気を体感できるような場を提供することを目的のひとつとして掲げてきました。当日のフロア全体でのディスカッションの様子からは、発表者と参加者双方にとって、英語による質疑応答の訓練の場としても効果的に機能していると思われました。

当日は、オーディエンスの投票により、発表内容や構成・議論の進め方等に基づきResearch Showcase Prizeの受賞者が選ばれました。栄えある受賞者は、イギリスの下院における奴隷貿易廃止反対派について発表された、大阪大学大学院文学研究科修士課程2年の森井一真さんです。今回のオーガナイザーの1人である大阪大学教授のピエール=イヴ・ドンゼさんから、賞状が授与されました。森井さんは、奴隷貿易反対派の政治的・経済的背景や利害関心を、スライドを効果的に用いつつわかりやすく提示しておられ、専門外のオーディエンスにも研究の内容とその意義を明快に伝えられたことが受賞につながったと思われます。

7thRS③

 

今回発表されたスピーカーの方々には、後日アンケートに回答していただきました。
以下では、その内容をご紹介します。

 

  1. 準備と発表を通して楽しめたこと、苦労したこと

【楽しめたこと】

・少ない時間でいかにクリアに論点を提示できるかを考える工程がもっとも楽しめた。
・全体的に発表者をサポートしようとする雰囲気のなかで報告できたこと。
・どういう風に自分の議論を構成し、見せる(魅せる)か考えること。

【苦労したこと】

・8分の枠に収まるように自分の研究を要約し、かつ説得性を持たせること。事例を入れれば時間を超えてしまい、概要だけでは説得的とならないというジレンマ。
・自分と専門分野を異にする人に伝わるように、基礎情報を入れつつ、なおかつ簡潔に議論の筋道を紹介出来るように原稿を書くことは苦労した。
・当日の質疑応答。

  1. Research Showcaseへの参加が今後のキャリアと研究にどのように役に立ちそうか

・「人前で発表する際に、心の落ち着きを手に入れる感覚と、「緊張をうまく利用する」感覚をつかむ良い訓練になった。原稿へのフィードバックは、他の人がどのように読むのか知る良い機会だった。また、二人からコメントを得られたのはよかった。二人とも指摘していたり、片一方の方のコメントがすごく参考になったりした。」
・「もっとも直接的には、自分の研究を英語で伝える際の表現方法を知ることができたことです。とくに添削で、おかしなところを修正していただくことで、他の人にも理解してもらえる英語表現をまとめて手元に残すことができました。〔…〕特に、数量的なデータを示すための表現は内容が変わっても応用が利くストックとなりました。また、「挨拶→イントロ→結論→ボディ→結論→挨拶」といった英語報告の型を経験することができたので、次の英語報告の機会に踏み出しやすくなりました。〔…〕」
・「〔…〕別の研究会で報告の機会をいただけたりしたのが直接的な影響。まわりの英語力が非常に高く、語学への危機感が出たのが一番の収穫。」

52351583_10156316812348981_1793694367056134144_n

 

まとめ

初めての大阪での開催は、皆さんの活発な議論により成功の裡に終えることができました。
報告者全員がこの日のために入念な準備を重ね、今後の進展が楽しみになるような興味深い報告を聞かせてくださいました。
また、学生も含め広くフロア全体から質疑の声が上がったことは、我々運営側としても嬉しい限りです。

今回の大阪での開催は、これまでの歴史家ワークショップの活動に共感してくださった関西方面の方々の協力により実現しました。
今回の成功を踏まえ、関西では早速次のワークショップの計画が始まっています。歴史家ワークショップの活動を支える輪はますます広がりを見せています。
その期待に応えられるよう、今後も様々な企画を打ち出していくつもりですので、応援をどうぞ宜しくお願いいたします。

最新の情報はTwitterから入手可能です。
(Twitterへのリンクはこちら

歴史家ワークショップでは、新しい運営委員を随時募集しています。
日本での歴史学研究を一緒に盛り上げていきたいという思いさえあれば、どなたでもご参加可能です。
少しでも参加に興味をお持ちの方は、お気軽にご連絡ください。心よりお待ちしております。

2018年9月9日 「迷える子羊たちのために 論文執筆の処方箋」開催報告

2018年9月9日 「迷える子羊たちのために 論文執筆の処方箋」開催報告

概要

研究におけるゴールは、論文の執筆や学会発表というかたちで明示することが挙げられるでしょう。しかし、ここに至るには常に思考を反復しなければならず、わたしたちは試行錯誤を繰り返しています。このなかで、わたしたちはどのようにアイディアを育てているのでしょうか?

本ワークショップでは、西洋史研究者とアウトライン・ライティングの専門家より、執筆の過程について、どのようなことを問題と感じ、どう対処してきてこられたのか、失敗談を交えてお話しいただきました。スピーカーと参加者を交えたオープン・ダイアローグでは、みなさんが普段感じてる研究にまつわる悩みをポストイットに書き、それを模造紙上で分類する作業を行いました。全体のオープン・ダイアローグでは、3名のトークと各グループの模造紙にもとづき、各々の悩みとそれに対するメソッドについて議論しました。

 

トーク① 隠岐さや香氏(科学技術史・社会思想史/名古屋大学)

IMG_6963

隠岐氏は、未完に終わったフランス語の博士論文の執筆過程を失敗談として紹介した。自身はこれまで、シンポジウムや科研の企画など外部からの要求を受けて葛藤しながら書いてきたが、自分が「これは失敗だ」とみなして諦めないかぎり最後に何かしらの結果は出るのだと語った。

 

トーク② 青谷秀紀氏(中世ネーデルラント史/明治大学)

IMG_6969

青谷氏は、研究に取り組む際のメンタル調整法として自身が実践してきた冷水シャワーと瞑想を紹介した。また、アイデアを発見・拡張・分割するための3つの観点①異質なものの組み合わせ、②情報の適量化、➂外部からの案を挙げた。また、学務・家事・育児と研究の折り合いのつけ方、生活一般から研究や教育に資するアイデアを引き出す可能性にも触れた。

 

トーク➂ Tak.氏(ライター)

IMG_6970

Tak.氏は、自身が模索し、普及させているアウトライン・プロセッシングという執筆テクニックを紹介した。アウトライン・プロセッシングとは、「アウトライナー」と呼ばれるソフトを使って文章を書き、考える技術。アウトライナーの3つの機能であるアウトラインの表示・折り畳み・組み換えを、著書を執筆した際の実践例をもとにレクチャーした。アウトライン・プロセッシングについて、詳しくはTak.氏の著書を参照。

 

 

オープン・ダイアローグ

IMG_6972

トークの合間に行われた一度目のオープン・ダイアローグでは、参加者たちが論文執筆に関して普段から抱いている悩みをひとつずつポストイットに書き込み、それをグループごとに模造紙上で集約・分類しました。グループ間で共通する悩みが多く、リサーチと執筆の時間配分、問題設定の仕方、スケジュール管理、環境づくり、モチベーションの維持、費用確保、自分の論文に関与する他者との距離の取り方、語学といった分類ができあがりました。ここで出た悩みに対して自分なりの解決策をもっている参加者には、コーヒーブレイクのあいだに赤字でそのメソッドを書いたポストイットを貼ってもらいました。

pasted image 0

 

3名のトークの後に行われた二度目のオープン・ダイアローグでは、模造紙上に現れたいくつかの課題に関して全員でディスカッションしました。

 

・インプットとアウトプット

「読書量が少ないのではないかと感じて、文献を読んでばかりでなかなか書き始められない」「所要時間を過小評価してしまう」という多くの人に共通する悩みが話題となったときには、アウトライナーを用いたフリーライティングの方法や、一定量のページを読むのにかかった時間を毎日記録し、自分の読書スピードを把握して計画を改良していく、という方法が紹介されました。

・自分が書いたものを、いつ誰に見せるのか

これについては人それぞれでした。他人の意見に影響を受けたくない、という人もいれば、院生同士で見せ合う場がほしいという人もいました。ある参加者は、指導教員に「自分ではまだ見せられないと思う段階で見せるように」という言われているとのことでした。モチベーションの維持、スケジュール管理、論文を完成に向かわせる環境づくりといったことに密接に結びつく問題です。

・その他のトピック

研究とプライベート

パワハラ、アカハラ

資金不足

人生の不安、etc. …

 

論文の執筆という当初の話題からどんどん派生して、議論は多岐にわたりました。結局、論文を書くという行為は、わたしたちが日々直面する公私の問題を適切な優先順位でケアしつつ、各々にとって心地のよいメンタルと環境を確保したうえに成り立つべきものだということを実感した方が多かったのではないでしょうか。

スピーカーの方々も、「論文ってみなさんどうやって書いてるんでしょうね?」とか「自分の研究手法を確立できてはいない」ともらしていました。「論文執筆の処方箋」は、アップデートされ続けるのでしょう。

 

終了後、参加者に対してアンケートを実施しました。以下では回答の一部を紹介します。類似の企画を行うためのヒントになりそうです。

 

【学べたこと】

みんな同じ悩みを持っているのだな、自分だけではない、と思いました。(大学 院生)

・アウトライナー、逆算ウィークリー、年表作成などの具体的なメソッド。(大学 院生)

全体を通じて、色んな話を聞き、不安も薄くなった。卒論がすすまなかったり、 教授に連絡しなかったり(笑)したのは、自分の弱さだと思っていたが、みなさ ん様々な不安があると知り、安心した。また、それぞれの課題解決のために工夫 をしていたので、自分も頑張ろうと思った。(学部生)

 

【もっと知りたいと思ったこと】

・アイデアの鮮度や見切り時について。(大学院生)

・書いたものを「いつ見せるか」「どうやって見せるか」。(大学院生)

悩み共有などはできたかもしれないが、具体的な解決策についてもう少し踏み込 むべきだと思った。(大学院生)

 

【ワークショップの企画としてやってみたいこと・やってほしいこと】

・パワハラ・アカハラ対策(一般)

・メンタルを引き上げるのは個人的な面も多いので、方法、手法など、すぐにでも 変えられるものを対象にやってみて欲しいです。今日はみなさん自尊心や自己  肯定感の低さを感じているように思いましたが、自分にとっての「いつも」を  共有することで、結果的にメンタルを引き上げるのも良いのではないでしょう  か。(大学院生)

・海外研究者の失敗談など今回の内容の継続(教員)

・メモの取り方、インプットの効率よいやり方(ポスドク・非常勤講師)

・構想、書き初めレベルのものを見せ合う。(大学院生)

・論文執筆の方法について(今回は「研究をする上での悩み」が中心となっていた ので)(大学院生)

・語学の悩みが共通でけっこうあったので、勉強法について。あるいは勉強会を  やってほしいです。(大学院生)

・研究者としての就職について。特に学際領域におけるキャリア形成について(ポ スドク・非常勤講師)

 

まとめ

今回のワークショップは、「論文の執筆」にテーマを絞って企画されたものでした。しかし、参加者から出てきた悩みは論文執筆そのものだけではなく、その周辺にある研究環境やメンタルに関することなど多岐にわたり、しかもどれも多くの人に共通するものばかりでした。このイベントを開催したことで、多くの研究者が共通の悩みを持っており、それらが自分だけの悩みではないと認識することは、研究者にとって大きなメリットであることが明らかになりました。歴史家ワークショップは、上記のアンケート結果やみなさまのアイデアをもとに、今後も類似のイベントの開催を続けていきたいと考えています。アイデアのある方は、運営委員へご連絡いただくか、当HPのコンタクトフォームでご連絡いただけると幸いです。

 

2018年9月11日 Early Career Conference 開催報告

Research Showcaseの関連イベントとして、2018年9月11日にEarly Career Conferenceを開催しました。大学院生からポスドクまでのキャリアステップにある若手研究者の報告会で、歴史学研究者がカンファレンスにおける研究発表と司会進行(チェア)の経験を積むことを目的とするものです。

20180911_063253535_iOS.jpg

初回にあたる今回は、東京のほかにシンガポールや香港、スコットランドから国際色豊かな6名のスピーカーが集まりました。東アジア経済史のポスドク研究員ラッサーン・モアッジン氏による30分の基調講演のあと、博士課程・修士課程の大学院生にそれぞれ20分の持ち時間で研究内容を報告していただき、すべての発表に20分間のQ&Aセッションを設けました。

加えて、若手研究者の発表スキル向上のために、当日の朝にすべての発表者が司会と発表のリハーサルを行い、相互にフィードバックを行いました。これによって、参加者全員が話し方や発表の構成、スライドの表現について改善案を学ぶことが出来ました。

Photo 2018-09-11 17 51 01.jpg

当日の運営は東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻の貝原伴寛(博士課程・フランス近世史)と照井敬生(修士課程・イギリス文化政策研究)が担当しました。専門分野もキャリアも異なる若手研究者・学生が一緒に発表をするという試みながら、合計で約20名の参加者が集まり、打ち解けた雰囲気で、各セッションの質疑応答は大いに盛り上がりました。

懇親会では、細かい専門分野を超えて若手研究者が国際的にネットワークを築く必要性を再確認し、上海・シンガポールの学生も今後同様の活動に取り組む意志を見せていました。

20180911_125234791_iOS.jpg

以下報告者向けにおこなったアンケートの回答を抜粋して紹介します。

今回の報告会で学んだこと、楽しいと感じたこと

  • 「リハーサルセッションと打ち解けた社交の時間に加えて、学会本番中での、国際色ある聴衆との質疑応答から多くを学び、楽しむことが出来た。専門外の研究者から飛んでくる鋭い質問の数々を受け止めるのは素晴らしい経験だった」
  • 「幅広い研究者の前で自分の研究成果を発表し、彼らと知り合うことが出来たのは喜ばしい経験だった」
  • 「特に印象的だったのは、国際的な今回のプラットフォームに、熱意ある若手歴史学者が世界中から集まって意見交換を行い、親睦を深めていることだった。これは若手研究者にとって大きな励みになると思う」
  • 「他の若手研究者と知り合うことが出来たのは非常に有益な経験だった。研究の話のみならず、若手人文学者の状況についてもっといろいろと話していたかった。参加者同士で問題や関心を共有しており、お互いに助け合うことが出来ると思う」

本報告会への参加が今後のキャリアと研究にどのように役に立ちそうか

  • 「今回の会議は、若手研究者にとって非常に役立ち、知的に得るものが多い環境だった。私自身が将来は他の研究者とこうした場を築いていきたいと思う」
  • 「今後とも同様の趣旨の国際会議に参加していこうと思う」
  • 「リハーサルを通じて発表の技術と発表内容を磨いたうえで、発表の経験を積むことが出来たのがよかった。発表に対する質問も会議そのものも協力的で建設的なもので、将来の研究に大いに役立ちます」

まとめ
今回のEarly Career Conferenceは、若手研究者が、国際学会での発表に必要な経験と会議運営の技術を身に付ける舞台を用意することを目的として始まった企画でした。結果として、多様な研究関心とバックグラウンドの研究者による活発な意見交換と研鑽の場を参加者全員で作ることが出来ました。

我々は、歴史学・人文科学の国際的な発展に貢献するべく、今後とも多様なイベントを企画・実施していく予定です。
運営の貝原・照井はともに、今回のイベントのためにHistorians’ Workshopに初めて加わり、企画・運営を一から行いました。報告者の募集から広報資料の作成、会場の準備など、普段参加しているような学会の舞台裏を体験することができました。複数の参加者と連絡をとっていくことや、当日の進行のペース配分など、大変に思われたこともありますが、今後の学会の企画や運営に必要不可欠な経験を積めたと感じています。

Historians’ Workshopは今後とも新たな企画を立案・実施していきます。企画・運営に携わっていただけるという方々は、是非ともご連絡ください。