第11回Research Showcase(日本文学・日本史)開催記録

第11回リサーチショウケースは7月11日にZoomを使って開催されました。初めての日本文学・日本史特集で、そしてコロナの影響で初めてのオンライン開催となりました。

今回は、日本文学分野から7名、日本史分野からは3名(含美術・思想史)の発表者が集まりました(当日のプログラムはこちら)。司会は国文学研究資料館の山本嘉孝先生が担当し、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)のタイモン・スクリーチ先生がゲスト・コメンテーターをつとめました。

スクリーチ先生は10名の発表に共通するテーマを「authority of Tokugawa」、「the way people looked back at history」、「notion of China」「emergence of modernity」としてまとめ、今後の研究展望として、江戸時代の全体像や「浮世」の捉え方を提起しました。

山本先生は日本研究の発表フォーマットに焦点を合わせ、日本語での発表はレジュメやスライドで史資料を解釈するスタイルが多いのに対し、英語での発表は「big picture/concepts」を重視しているとコメントしました。

今回も発表者の方々に、アンケートに協力していただきました。以下、一部を紹介します。

■今回の Research Showcase で学んだことで、同僚や今後の参加者と共有できそうなこと。

  • 普段の研究で反射的に使っている専門用語の英語訳ないし英語での説明方法を考える良い機会になった。
  • 自身の研究における大きな展望と、今現在行っている細かな研究との繋がりを、他分野の研究者に対して明快に説明することが求められる場であり、そのための訓練と自覚化の機会になった。

■Showcaseへの参加は、あなたの今後のキャリアと研究に、今後どのように役にたちそうですか。

  • 英語に限らず、語学を本格的にやらないといけないなという危機感を強く持ちました。日本文学の命脈を保たせるためにも、海外に進出することや、海外から輸入するということを、今後の研究者は真剣に考えるべき時期に来ていると実感しました。
  • 原稿へのフィードバックは、自分の目では気づかないような綻びやミスを指摘していただけて、大変勉強になりました。それだけでなく、一回自分の原稿を落ち着いて読んでみると、自分でも「こういう言い方のほうがいいんじゃないか」とか、「こっちのほうが分かりやすいんじゃないか」とか、そういう視点を持てるようになると思います。
  • 国際学会での発表は、多様な背景を持つ研究者が4人程度でパネルを組んで応募することが一般的だと思うので、RSで出会った研究者ネットワークは大変貴重なものになると思います。
  • 発表原稿のフィードバックについては、発表内容におけるどの部分が必ずしも共有の知識ではないのかを、他分野の研究者の方から具体的に指摘して頂ける機会が貴重であると感じます。慣習的に使用している用語を、改めて言語化する訓練の機会にもなりました。
  • 今回の発表を通して得た経験で一番大きかったのは、英語発表に対する免疫がついたことです。正直自分が英語で発表することはないだろうと思っていたのですが、RSでの発表を経てむしろ積極的に国際発信していきたいという気持ちになりました。

まとめ

初めてのオンライン開催となったRSですが、無事に終えることができました。オンライン開催により地理的制約がなくなったことで、アメリカ、ヨーロッパ、中国からの参加者も含めて30名ほどの参加者を得られました。日本史や日本文学研究においても国際発信の機会がいっそう増えつつあるなか、多様なステージに身を置く研究者があつまり、研究内在的な論点からその伝え方に至るまで、刺激的なやり取りを交わす機会となりました。

SOASのスクリーチ先生、大阪大学の飯倉先生、国文学研究資料館の山本先生、そして告知にご協力いただいた皆様に感謝いたします。

歴史家ワークショップでは、今後も日本史、日本文学研究者の国際発信をサポートする取り組みを進めていきます。一層多くの方々に参加していただけますよう、運営側としても願っております。

【開催レポート】Self Care and Peer Support Workshop (2020年6月25日開催)

2020年6月25日(木)に「セルフケア・ピアサポートワークショップ」がオンラインで開催されました。企画運営を担当した藤田風花さんによる本イベントのレポートを以下に掲載いたします。

【開催趣旨】

歴史家ワークショップはこれまでにも英文校閲WSやCoffee Time Seriesなど、「ピアサポート」、すなわち研究対象や方法論の違いを超えて研究者たちが仲間同士を支え合う水平関係でのサポートを実践してきました。本企画はより根本的なレベルに立ち返り、「そもそもピアサポートとは何か」について考えるためのイベントとして開催されました。

これまで、研究や教育活動に携わるなかで悩みが生じたとき、多くの人が「自己流」で対処してきたのではないかと思います。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、研究仲間や同僚との対面でのコミュニケーションの機会が失われたこと、さらに日常生活と研究活動との切り替えや、留学や史料調査の予定変更とキャリアへの影響、オンライン講義の受講や準備にたいする疲労等の新たな問題にも向き合わざるをえない状況が続いています。

そのような状況において、今回の企画は実際に歴史研究に携わっている方々から寄せられたセルフケアについてのイベントを希望する声から出発し、歴史家ワークショップとしては「セルフケア」に主眼をおいた初めての試みとなりました。いま一度セルフケアについての基本的な知識を得ることから始め、それを実践に繋げるというプロセスを体験する場として、レクチャーとワークショップの二部構成で実施されました。グリーフケアを専門とする一般社団法人リヴオンの尾角光美氏と水口陽子氏を講師に迎え、歴史家ワークショップ事務局の紺野奈央と京都大学大学院文学研究科博士後期課程の藤田風花が企画運営・進行を務めました。

【第一部】レクチャー「セルフケア実践につながる姿勢とスキルを学ぶ」

55名が参加した第一部では、まずセルフケアについての基礎的知識のレクチャーがおこなわれたのち、自分自身の現在の状態を俯瞰的に見るためのいくつかのスキルが紹介されました。ミニワークが取り入れられ、Zoomのチャット機能を活用して講師と参加者とのリアルタイムでのやりとりが講義と並行しておこなわれるなど、双方向的な要素が盛り込まれていました。教わったスキルをその場で実践し、効果を実感することは、参加者それぞれがセルフケアのスキルを自分のものとしていくうえで有意義なプロセスであると感じました。また、セルフケアについてさらに専門的な内容を知りたい人のために、参考文献もいくつか紹介されました。

レクチャーの後半では、セルフケアの実践に焦点があてられ、「ピアサポート」の意義と実践方法について説明されました。続いて、本イベントに集った参加者のピアの力を活かすことのできる実践方法として「当事者ミーティング」の手法が紹介されました。

【第二部】ワークショップ「当事者ミーティングの体験を通じピアサポートにふれる」

休憩を挟んで再開された第二部には20名が参加し、第一部のレクチャーで紹介された「当事者ミーティング」を実際に体験することに主眼がおかれました。はじめに、尾角氏のファシリテーションのもと、紺野と藤田、そして本企画有志の市川佳世子・安平弦司・吉川弘晃を加えた6名でデモンストレーションをおこないました。

その後、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使用して参加者全体が5つのグループに分かれ、「当事者ミーティング」を体験しました。各グループでは、上記6名と水口氏、森江健斗が進行役を務め、グラフィック・ファシリテーションの手法をもちいて話し合いの内容を可視化しました。まず、参加者に「現在気になっている・困っていること」や「実現したいこと」をいくつか書き出してもらい、時間の制約上そのなかから1つを取り上げ、グループ全体で共有しました。次に、悩みを共有してくれた参加者に、具体的な質問を投げかけることで、その悩みの背景を掘り下げました。続いて今度は悩みを共有してくれた参加者は聞き役に徹し、他の参加者がその悩みの解決に向けて思いつくかぎりのアイデアを出していきました。ここでは、議論を戦わせたりアイデアに優劣をつけたりすることは求められません。というのは、自分の共有した悩みの解決方法についてのアイデア出しを黙って聞いている参加者が、心のなかで自分自身が取り入れられそうなものだけを持ち帰ればよい、とされているからです。

グループワークを終えて全体のルームに戻ってきたのち、参加者全員が感想を述べて第二部は終了しました。「自分の悩みが自分以外の人たちで話し合われることで悩みを客観視できた」、「システマティックに時間を区切って行われたので、悩み相談にありがちな『だらだら続いて疲弊する』ということがなくよかった」「『ピア』の力を実感した」などの声があり、参加者が「当事者ミーティング」を楽しんだ様子が印象的でした。

【参加者の声】

・ピアサポートにおける「ルール」や「方法論」がわかり、何に気をつけたらいいのかわかったのがよかった。(修士課程、レクチャー・ワークショップ両方に参加)

・レクチャー内での質問に回答し共有することで、自分の問題や抱えていることに気づくという点ではセルフケアの手助けになった。自分だけの問題ならカウンセラーに相談するのはできるが、ほかの人の問題も共有し、お互いに悩みや思いを聞くことができたのがよかった。(修士課程、レクチャーのみ参加)

・専門家でなくても、ピアでできる支援を体験できたことは貴重な機会でした。また、そこで出てくる結論だけでなく、グループワークを行う過程で見えてくることもあり、それ自体がとても良い体験でした。(ポスドク、レクチャー・ワークショップ両方に参加)

・オンラインという制約がある以上いっても仕方がないことではあるのですが、やはりこうしたワークショップはぜひとも対面でやりたいなと思いました。ワークショップそのものについては、研究者という同じ立場の方々の悩みについて、自分ならどうするか、相手の悩みの解決のためにどうするかを能動的に考えるなかで、自分の中で燻ぶっていた悩みについても客観的に考えることができたので、得られるものも多く、とても面白かったです。(博士後期課程、レクチャー・ワークショップ両方に参加)

【おわりに】

欧米の大学では重視されているものの日本ではあまり馴染みのないピアサポートですが、今回のイベントを通じて、そのようなサポートを望んでいる人が多く存在するということを強く感じました。参加者の皆さんからは「当事者ミーティング」をあらためて実施する機会を希望する声を多くいただいているので、将来的にまた「当事者ミーティング」にフォーカスしたピアサポートの場を用意できればと思います。

イベントの最後に、尾角氏が「歴史家ワークショップとイベントへの参加をとおしてそれにかかわる人々の集まりは、潜在的にピアの力が非常に強いコミュニティである」とおっしゃったことが、とても印象的でした。個人レベルでのセルフケアを大切にしつつ、コミュニティレベルでピアの力を最大限に活用することができれば、アカデミアの「基礎体力」を向上させることにもつながるのではないかと感じています。本イベントで紹介・実践した「当事者ミーティング」を、参加者の皆さんがアカデミアにおけるピアサポートの有効な実践方法として受け止めてくださっていれば、大変嬉しく思います。

最後になりましたが、詳細なレクチャーとリラックスした雰囲気づくりをしてくださったリヴオンのお二方、双方向的なやりとりを可能にしてくださった参加者の皆さま、そして本企画の運営をサポートしてくださったすべての方々に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

文責・藤田風花

日本史史料英訳ワークショップ(中世の回)開催記録

(English follows Japanese.)

2020年6月7日・21日に、日本史史料英訳ワークショップの第一回・第二回が開催されました。講師として、イェール大学のポーラ・カーティス氏(日本中世社会経済史)をお招きしました。

第一回では醍醐寺文書を取り上げ、日本中世宗教史専門の橘悠太氏(奈良文化財研究所)と黄霄龍氏(東京大学)、第二回では御成敗式目を取り上げ、日本中世法制史専門の木下竜馬氏(東京大学史料編纂所)と佐藤雄基氏(立教大学)が史料の読み下し・現代語訳を担当しました。

以下、ワークショップの内容を簡単にまとめます。

【醍醐寺文書の回】
・英語圏における日本史史料翻訳の現状
・検討史料:康暦元年(1379)「足利義満御教書」、貞和三年(1347)「足利直義書状案」、応永三十四年(1427)「僧正隆寛付法状」など
・主たる論点:「護持」の英訳はdefenseかprotectionか、密教儀礼で使う「道具」はimplementかtoolかinstrumentか、文書名の訳し方は古文書の様式と機能いずれに即すか、など。

【御成敗式目の回】
・John Carey Hall(イギリスの外交官)による御成敗式目の英訳とその影響
・検討史料:第5条「諸国地頭、令抑留年貢・所当事」、第41条「奴婢雜人事」など
・主たる論点:「年貢」、「所領」、「知行」、「奴婢」の英訳など。

二回とも約27名くらいの参加を得られました。西洋史・東洋史の方も参加してくださり、日欧の土地制度・訴訟制度、日本の「奴婢」は「奴隷」なのか等についても議論が盛り上がりました。

また、参加者からは、①単語・語句レベルでの訳語を、日本と海外の研究者が一同に会して検討することで、日本史史料(そして非西欧圏の史料全般)を英訳するときに出てくる本質的共通課題が見つかる場となる、②こうした議論を史学史的にレベルアップし、日本と海外の両方の研究者にとっての意味を再確認する場になっていくことを願っている、との声も寄せられました。

まだ試運転段階ですが、企画・運営側として、本ワークショップが参加者の皆さんにとって有意義なものになっていることを知り、心から喜んでおります。秋以降は近世、近代の回なども予定していますので、どうぞ、続報を楽しみにお待ちください。

問い合わせ先:黄霄龍 hxiaolong[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp

ーーーーーーーーー

On June 7 and June 21, 2020, the Historians’ Workshop held workshops on the interpretation and translations of Japanese historical materials. We invited Paula R. Curtis (Yale University), a specialist in Japanese medieval social and economic history), as our lecturer.

In the first session, we discussed fourteenth-century documents related to Daigoji Temple. TACHIBANA Yuta (Nara National Research Institute for Cultural Properties) and HUANG Xiaolong (The University of Tokyo), who specialize in the history of medieval Japanese religion, prepared the medieval Japanese readings and modern Japanese interpretations, which were distributed to workshop participants. In the second session, we discussed the Kamakura period legal code Goseibai shikimoku. KINOSHITA Ryoma (Historiographical Institute, The University of Tokyo) and SATO Yuki (Rikkyo University), who specialize in the history of legal systems in medieval Japan, presented their readings,  interpretations, and insights into the translations of some terms found in the documents.

The following is a brief summary of these sessions.

【A selection of Daigoji Materials】
・Issues in the translation of premodern historical materials
・Documents discussed: Ashikaga Yoshimitsu Directive (1379), Ashikaga Tadayoshi Letter Facsimile (1347),High Priest Ryūkan Letter of Transmission (1427) .etc.
・Some points of interest: the translation of 護持 as “defense” or “protection、” how to capture the nuance of the term 道具 in religious settings (debating the terms “implement,” “tool” or “instrument”)、how to translate titles of documents provided by scholars that may be interpretative (based on style or function), etc.

【A selection of Goseibai shikimoku】
・John Carey Hall’s 1906 translation and its influence on present-day research and teaching
・Documents discussed:Article 5 “Regarding land stewards (jitō) of various provinces withholding the annual tribute (nengu) and land taxes (shotō)”; Article 41 “Regarding bound servants (nuhi zōnin)”, etc.
・Some points of interest:considerations in the translation of core terms such as 年貢, 所領, 知行, 奴婢, etc.

We had about 27 participants in each session. Attendees included   scholars of Western history and Eastern history, and discussions were held on the differences between land systems and legal systems in medieval Japan and Europe, and the complications that arise when dealing with Japanese terms such as  “奴婢,” which is sometimes translated as “slave,” and sometimes as “bound servant.”

Participants also expressed their hopes that (1) by having Japanese and foreign researchers discuss translation together at the word/phrase level we will be able to find common issues that emerge when translating Japanese historical materials (as well as all the non-Western historical materials) into English, and that (2) we might be able to elevate these discussions to a historiographical perspective and reconsider their significance to both Japanese and foreign researchers.

We are still experimenting with the workshop’s format, but organizers are very pleased to know that it was meaningful for all the participants. We are also planning to hold Edo and modern sessions  this fall and look forward to seeing you all next time!

For more information, please contact at HUANG Xiaolong (hxiaolong[at]e.u-tokyo.ac.jp).

「スライド道場」開催レポート

去る2020年5月11日および18日に、スキル・ワークショップ「スライド道場」をオンラインで開催し、おかげさまで非常な好評を博しました。参加者の一人であった山田智輝さん(京都大学・博士課程)に本イベントのレポートを執筆していただきましたので、以下に掲載いたします。

開催趣旨

議論の内容や妥当性が問題となる学術発表において、それを補助する視覚資料そのものの出来が問われることはほとんどないでしょう。そうした理由もあって、従来、学会での発表にさいしてどのようにスライドをつくるべきなのかは、公の場で体系的に伝えられることはまれで、おおむね個々人の裁量にゆだねられてきたといえるでしょう。

しかし実際には、スライドは発表の質を向上させるための要素として重要な役割を担っています。そこで、スライドの作成について話しあい、そのポイントやテクニックを可視化かつ共有する場として、本ワークショップが企画・開催されました。ここでの目的は、ともすれば多くの情報をひとつのスライドに詰め込んでしまいがちな歴史学分野の研究発表について、どのようにスライドを作成すれば効果的で、よりわかりやすく説得的に聴衆へ内容を伝えられるのかを考えることでした。そのためにも、本会特任研究員の古川萌氏がファシリテーターを務めたのにくわえて、ゲスト講師として竹中技術研究所の今西美音子氏を招聘することにより、歴史学以外を専門とする研究者の視点もとりいれつつ、よりクリアなスライドづくりについて議論しました。

【第1回】スライドづくりの基礎を学ぶ

11日の第1回は、古川・今西両氏をふくめて23名が参加しました。そこでは、今西氏やそのほかの参加者が実際に過去の研究発表の場で用いたスライドを参考資料としながら、スライドづくりの基礎について学びました。

はじめに、どのような役割をスライドに担わせるかに応じて何を記載する必要があるのかを決定していくことや、図表や見出しにくわえ、関係性・構造・性質あるいは数量といった情報を提示するのにスライドは適していることなど、スライドづくりの考え方について今西氏がレクチャーをおこないました。

つづいて、そうした考え方にもとづき、どのようにスライドを作成すればよいのか、具体的なテクニックについて話しあいました。まず推奨されたのは、自分自身のテンプレートを「育てる」ということでした。すなわちそれは、スライド作成アプリケーションにある既存のテンプレート機能をアレンジしたり、自分でゼロからテンプレートをつくってみたりし、さらにその用いたテンプレートを一度きりのものに終わらせずにくりかえし使いながら、そのたびごとに改良していくというものです。

また、紙面づかいや配色、文字の書体やフォントサイズ、ヘッダーやフッターといった機能などにかんして、どのようにすれば聴衆にとって親切なのかを話しあいました。そして、スライド全体の粒度、エッヂや比率等を統一したり、おなじレベルの情報はおなじ見た目にしたりすることなどの重要性を学びました。

【第2回】実践を通してより具体的に学ぶ

18日の第2回には、19名が参加しました。はじめに、前回の補足として、パワーポイントのテンプレート機能の使い方についての詳細な紹介が古川氏からなされました。それにつづいて、前回の内容をふまえて3名の参加者が事前に作成したスライドについて、参加者が作成時の意図を説明したのち、今西氏が考慮すべきポイントや改善できる箇所についてアドバイスをおこないました。

おもに話しあわれたのは、図や配色、年表やキャプションについて考慮・工夫すべき点についてでした。具体的に論点となったのは、どんな聴衆にとっても一目で把握しやすくするために、ユニバーサルデザインに則った色使いを心がけることや、各スライドのデザインを統一したり、行間を調整するなどして、ひとつのオブジェクトをひとつのかたまりにみせたりすることの重要性でした。さらには、アニメーションやドロップシャドウの使い方とその工夫についても詳細な紹介がなされました。

少しの工夫で発表の質を上げよう

以上のように、今回のワークショップでは、ひとりではなかなか気づくことのできないスライドづくりの知や技術を、可視化・共有することができました。多くの人はこれまでしばしば、感覚的な見た目に頼ってスライドを作成してきたのではないでしょうか。しかしそうではなく、理論をもとにデザインすることで、それがたとえほんの少しの工夫であっても、スライドがずいぶんとクリアでわかりやすいものになり、ひいてはそれが発表の質の向上につながることを本ワークショップでは体験できました。とくに、非常に緻密な数値や計算にもとづいた、今西氏のスライド作成理論・技術は瞠目すべきものでした。

また、テンプレートを育てていくことによって毎回のスライド作成にかかる時間を短縮できるため、また、スライドの完成度を高めてクリアにすることによって口頭で説明しなければならない事柄が少なくなるため、その分だけ発表の内容・議論そのものへより注力できる、という同氏の言葉も印象的でした。

参加者の声

ほかの参加者の方々からは、「スライド道場」の参加後のアンケートにおいて、以下のようなコメントをいただいています。

  • 講師の今西さんと参加者の方のスライドを見て、自分のスライドを客観的に見ることができた。私はMacとWindows の両方を使用しているので、Keynote とパワポの両方について知ることが出来て良かった。テンプレートを自分で育てるという発想すら無かったが、年表は必須となるので、作成してみたいと思う。ヘッダーや色の使い方も実践できて良かった。(教員・実践を含むワークショップに参加)
  • パワーポイントに限らず、レジュメにも応用可能な知識を多く教えていただけて、非常に参考になりました。自分が使う記号にルールを設けるというアイデアは早速導入させていただいてます。導入してみると思ったより時短に繋がっているなという実感があります。これまでどこでも教わったことのない知識ばかりだったので、大変刺激的な会でした。(大学院生・聴講のみで参加)
  • テンプレを自分で育てていくなど、その場その場のテクニック以外のことも知れてよかった。「魅せる」スライドは、やはり時間をかけて作るものだと再確認できたので、これから重要な発表の時は、スライドの作成などの見せ方にも拘りたい。(大学院生・聴講のみで参加)

また、遠隔地からの参加も可能となるオンライン開催で良かったというコメントも多数いただきました。

歴史家ワークショップは、歴史研究にかんするイベントの開催を今後もつづけていきたいと考えています。アイデアをおもちの方はぜひ、運営委員に直接、あるいは rekishika.workshop[at]gmail.com にご連絡いただけますと幸いです。

ラウンドテーブル・ディスカッション「西洋古代史・中東史研究の国際化にむけて」開催報告

17FebRoundtablediscusion
会場のようす

2020年2月17日に「西洋古代史・中東史研究の国際化にむけて」を開催しました。カナダ・トロント大学の2人の研究者、キャサリン・ブルーアン氏(古代ローマ史・エジプト史)とギリシュ・ダスワニ氏(ガーナをフィールドとする人類学)に対して、熊倉和歌子氏(東京外国語大学・エジプト中近世史)と歴史家ワークショップ運営委員の高橋亮介が自らの経験を語りつつ質問を投げかけ、それへの応答、さらにフロアからの発言を交え、西洋古代史・前近代中東史の国際化の現状と問題点について話し合いました。

ケベック州出身でフランス語を母語とするブルーアン氏にとって、フランス留学は研究者としてのキャリアを積む上で必須であり、フランス語での書籍・論文の出版もしてきたが、アメリカでのパピルス学のサマーセミナーに参加したことで英語圏での人脈が広がり、英語での研究発表にシフトしていったとのことでした。さらにSNSでの英語による発信に対して想像以上の反響があり、講演に呼ばれる機会も増えたそうです。

ブルーアン氏の近年の研究発表は査読付きの学術雑誌への投稿ではなく、論集への寄稿が中心であるとのことです。氏が編者となる論文集への熊倉氏の寄稿も、共通の知り合いであるカナダ人研究者の紹介で実現したそうで、個人的なつながりの重要性が強調されました。

ギリシュ氏からは、査読誌への投稿の際には、その雑誌の性格や編集委員がどのような人であるかを研究する必要があること、また学術活動全般において、キャリアの早い段階や新しい環境に移った際には自分の有能さを証明することは必要であるかもしれないが、その後は他者との競争よりも共存・共生によって研究を盛り上げるべきであるとの指摘がありました。

他にも元来、西欧諸言語を研究発表に用いてきたパピルス学における英語使用の進展の状況、カナダの大学の英語圏の大学のなかでの位置づけなどについて議論が交わされました。

特定の研究分野を念頭においた企画でしたが、いくつかの話題は歴史研究のあり方全般にも及ぶものとなりました。現在の学術活動には解決の難しい構造的な困難や権力関係があることも確認されましたが、そのような問題に自覚的であり続けることが必要だと感じさせるイベントとなりました。

第10回Research Showcase(名古屋)開催報告

2020年2月18日に名古屋大学で第10回Research Showcaseが開催されました。名古屋での開催は初の試みとなりました。

(Research Showcaseの過去の開催についてはこちら

Research Showcase Prizeの受賞者として、名古屋大学の原田礼帆さん(日本美術史)と東北大学の阿部純さん(アメリカ研究)が選ばれました。当日の開催様子に関して、名古屋大学の留学生Emily Richardsさんが寄稿してくださいました!

―――――

The 10th Research Showcase presented by the Historians’ Workshop, hosted for the first time in Nagoya, started on a high note by skipping the introductions and diving right into presentations. Presenters each gave 8 minute talks, followed by a 7 minute question and answer session. Dr. Nathan Hopson, a professor at Nagoya University who specializes in modern Japanese history, moderated the event, which had a total of 24 attendees. This incarnation of the showcase mostly turned its eye outside of Japan, bringing together 9 presenters with varied backgrounds and topics across various time periods and geographic locations. The topics covered included 18th century theological history, Minoan Crete architectural history, early imperial Roman history, 14th century Italian history, early modern French history, modern American history, turn of the century German history, early 20th century Japanese art history, and Revolution-era French history. 

The overall mood was that of attentive concentration as the audience listened to the arguments. After each talk concluded, the audience had insightful questions that often pushed the presenters to think even deeper about the various directions their research could go. The presenters thought carefully about the questions posed to them before answering and were effusive in their thanks to the audience members.

After the first round of presentations, organizer Dr. Koji Yamamoto talked about the importance and history of the showcase and what they hope to accomplish through the hosting of this event. Dr. Yamamoto spoke about the benefits the participants of the showcase gain, including being accepted to conferences, getting feedback to improve their research, and being published in peer-reviewed journals. He also thanked The University of Tokyo for their generous grant that allows them to continue with the showcase and expanding the scope of their activities. In addition, he offered his thanks to Dr. Hopson as well as Dr. Julia Yongue from Hosei University, who specializes in business history, for coming to offer her feedback on the event.

After the main presentations had concluded, Dr. Yongue gave a helpful talk on how to improve the future presentations of research by PhD and Masters candidates. Her tips and specific feedback, based on the presenters from the previous showcase, as well as general tips were informative and engaging.

The audience then voted on the Best Presentation of the evening. This prize is awarded to the presentation with the best content, reasoning, and discussion of results. Two presenters tied for first place due to the combined excellence of the collective presentations. Jun Abe from Tōhoku University and Ayaho Harada from Nagoya University were presented their awards by Dr. Yongue. Mr. Abe and Ms. Harada were chosen due to their effective use of evidence, clarity of argument, and relatability in relaying the content of their research to others outside their field. In addition, they demonstrated a great deal of insight when answering questions after their initial presentations on the attitudes of African-Americans towards the Japanese redress movement and Modern Japanese painting in the early 20th century, respectively.

当日のスピーカーやオーディエンスの皆さんにお答えいただいたアンケートより一部紹介します。

オーディエンスA
I learnt a lot about many topics that I never thought about. I would like to know the situation for foreigners doing the academia in Japan, what are the differences, how to join, and some other general information how to get published.

オーディエンスB
自分は日本のことをメインにやっているので、7月の日本史・文学のようなイベントが今後どんどん増えると素晴らしいと思います。

まとめ
今回はたくさんの留学生の方も参加していただき、興味深いフィードバックもいただきました。運営側も多様な開催の形について示唆を得られました。次回の7月日本文学・日本史Research Showcaseをどうぞご期待ください!

2019年10月Research Showcase (京都) 開催レポート

第9回は10月11日に京都大学での開催でした。2月の大阪大学での開催の成功と皆様の要望を受けて、今年二度目の関西での開催を実現することができました。

台風19号の影響で遂行できるかどうか不安もありましたが、遠方からの報告者の発表順番の調整や、旅程の変更に伴う旅費面でのサポートなどの運営委員による対応と、参加者の熱意と協力のおかげで無事に開催でき、しかも33名の参加という大盛況でした。

今回は、日本近代史、日タイ関係史、イギリス史、西洋美術史、中国現代史などさまざまな分野にわたる7名の発表者が集まりました。司会は京都大学のスティーブン・アイビンス(Steven Ivings)さんと久野愛さんが担当し、名古屋大学のネイスン・ホプソン(Nathan Hopson)さんがゲスト・コメンテーターをつとめ、質疑応答に関するノウハウなどについてアドバイスしました。

今回のResearch Showcase Prizeは、前回の東京RSと同じく、同点一位で趙雅萌さんと水野良哉さんの二名の発表者が選ばれ、ゲスト・コメンテーターのホプソンさんから賞状が授与されました。

今回も発表者の方々に、アンケートに協力していただきました。以下、一部を紹介します。(アンケート内容より抜粋)

■ 準備と発表を通して楽しめたこと、苦労したこと
【楽しめたこと】
・会終了後に他の発表者と発表内容について議論したことは非常に楽しいと感じた。今回の発表者は自身のフィールドと離れた研究者の方も多く、その視点は新鮮かつ参考になった。
【苦労したこと】
・英語に苦労したのはもちろんですが、8分という限られた持ち時間かつ必ずしも前提知識を共有しない聴衆を前にしていかに「伝わる」発表原稿を作り上げるかということです。逆にそれが醍醐味でもありました。

■ 今回の Research Showcase で学んだこと(例えばプレゼンや準備の方法などについて)
学術報告において、語学の壁を必要以上に感じない方が良い、という事であろうか。たしかに自身を振り返れば、当日は他の報告者の語学力に圧倒され、質疑応答も満足にできたとは言い難い。逆にいえば、その程度の語学力でも、しっかりと準備すれば、報告を完遂できる。
・発表原稿やパワーポイントを直前まで粘って作成するのもいいが、必ず発表のリハーサルをしておくこと。身振りやジェスチャーも交えて。
・発表の中で少しでもいいから史料を見せることです。歴史学の研究のなかで史料は重要であることは言うまでもありません。たとえ、英語で表現することが難しいとしても、史料を提示して、「史料にはこう書いてあるから、このように解釈することができる」という議論を組み込んで発表したほうが、説得力を持って相手に伝えることができる。

まとめ
今年二回目の関西での開催となったRSは、京都大学の皆さまのご協力のお陰で、盛況のうちに終えることができました。京都大学の久野さん、Ivingsさん、金澤さん、そして告知にご協力いただいた皆様に感謝いたします。Research Showcaseは首都圏を超えて全国に広がりつつあります。次回は、2020年2月18日に名古屋大学にて開催予定です。はじめての名古屋での開催となります。Call for Papersは近日公開予定です。ご期待ください!

2019年8月 Research Showcase (東京) 開催レポート

第8回Research Showcaseが8月1日に東京大学で開催され、7名の発表者と31名の参加者を得ました。 大阪大学のピエール=イヴ・ドンゼ(Pierre-Yves Donzé)さんをゲスト・コメンテーターに迎え、慶應義塾大学の市川佳世子さんが司会を務めました。当日はオーディエンスによる投票で、米倉美咲さんと山田智輝さんが同率一位でResearch Showcase Prize受賞となりました!

当日のスピーカーの皆さんにお答えいただいたアンケートより、ここでは準備と発表を通して楽しめたこと・苦労したことについて内容を一部紹介します。(アンケート内容より抜粋)

【楽しめたこと】
・一番楽しかったことは、所属する大学とは異なる離れた場で開催されたResearch Showcaseに参加することで、さまざまな専門性を有する、初めて会う人たちばかりに対して自分の研究について発表し、たくさんの質問やコメントをもらえたり議論したりできたことです。
・ 最も楽しめたのは、添削者とのやり取りと当日の質疑応答だったように思う。自分一人では上手く表現出来なかったことを、添削者の方に相談することによって、シャープな英文へと昇華出来た瞬間は、納得感と達成感とで興奮した。
・ 楽しめたことは、この機会に新たに知り合った先生方や院生仲間から有意義なフィードバックを発表前後ともにもらえたこと、若手研究者をエンカレッジする(良い意味で堅苦しくない)雰囲気の中で準備・発表を行えたことです。

【苦労したこと】
・オーディエンスを置いてけぼりにしないで、彼ら/彼女らの理解を伴いながら発表を進めるストーリーラインを構築するのに四苦八苦した。当初の原稿は、研究テーマのコンテクストや概念の定義を逐一定義していけば、誤解や混乱はないだろうと考えて作成したが、それが却って議論の流れをぶつ切りにしていると指摘された。そこで論文のような厳密さよりも、まずはオーディエンスと発表を進行するために必要な情報だけに絞って、欠けている曖昧な部分は想定質問を設定して対応するようにした。

まとめ
8回目となった今回のRSには、助成をいただいている東京倶楽部事務局の保坂英博様をお招きし、激励のメッセージをいただきました。どの発表も素晴らしいものでしたが、受賞者の米倉さんと山田さんの発表は、明確な論点とその意義を力強く押し出した説得力のある構成が評価されたようでした。全ての発表が終わった後に、ゲスト・コメンテーターのドンゼさんから発表の仕方についてアドバイスを頂きました。今回の発表のテーマの多くは西洋史に関連していましたが、当日のオーディエンスの中には、日本経済史、日本近世外交史、中国経済史、中国哲学など、東アジア関係の分野の方がたくさんいらっしゃいました。今後、アジア・日本関連の発表がより増えることが期待できます。



「バズる(?)アウトリーチのすすめ―公益性のある情報発信に向けて」開催レポート

2019年7月22日に開催したイベント「バズる(?)アウトリーチのすすめ―公益性のある情報発信に向けて」の開催レポートをお届けします。

趣旨と登壇者の紹介については過去の投稿をご覧ください。
2019年7月22日「バズる(?)アウトリーチのすすめ―公益性のある情報発信に向けて」開催のお知らせ

各登壇者の講演

IMG20190722173851
今回はHistorians’ Workshop初の試みとして、講演内容を動画に収めてみました。
動画編集は広島大学D1の北川涼太さんが担当してくれました。(北川くん、本当にありがとう!)
以下、講演内容の重要トピックを箇条書きで列挙しています。気になるトピックがあれば是非動画の方で詳細を確認してみてくださいね!

北村先生の講演「ワイルドならどうする?」


・批評家としての北村先生とTwitter
オスカー・ワイルド:批評=芸術
ワイルドなら絶対にTwitterをやるはず…。
ワイルドみたいに書きたい!Get Wilde!
・ウィキペディア英日翻訳活動
・自身の英語力を活かした社会貢献として
・授業で学生に翻訳を実践してもらう「英日翻訳ウィキペディアン養成プロジェクト」
・多数の団体・メディアから取材を受けるように
・信頼と継続がバズを生む
原稿は絶対に落とさない!

古川先生の講演「美術展覧会に合わせたアウトリーチ」


・展覧会の情報不足を補うものとして、美術展に合わせたアウトリーチ活動を開始
・イラスト入りパンフレットの配布・展覧会ツアーの企画
→団体で動く難しさ/大声は出せない/参加者の層が首都圏に限定
・ネットプリントを活用
→全国の人がガイドを楽しめるように
・団体との共催で規模アップ
・情報発信とリスク管理
・込み入った説明にTwitterは向いてない(誤解を生みがちに…)
・長文はブログで発信
・原稿の下読み依頼や下書き保存の活用で不必要な炎上を回避

丸尾氏の講演「ちょっと輝きが足りない『鈍重な自己啓発』のすすめ」


・バズる記事の共通点(田野大輔先生の記事を例に)
1)新事実(「ナチスの体験授業」という突飛さ)
2)新解釈(「全体主義は容易である」)
3)実存に根差した共感(「自分もこうなり得る」「身近にも全体主義の萌芽があるかも」)
≒鈍重で持続可能な自己啓発
・「実存に根差した共感」から、読者が自らの環境を操作可能・変更可能なものとして認識できるように…アウトリーチの公益性
・たぶん編集者はめっちゃTwitter見てる(からどんどんツイートして!)
・情報発信において、一番大事なのは覚悟では?

質疑応答

質疑応答は、参加者の皆さんのおかげで非常に活発なものとなりました!

Q. アウトリーチの意義、若手がすることの意義
A. 専門分野を残すために良き受容者を育てたい。教養よりのコンテンツを潰そうとする人がいるが、そういう人はそのコンテンツが流行っていることに気づいていない。可視化が重要。
A. そもそもアウトリーチを活発化する必要があるか解らない。自分の場合は専門分野を愛する気持ち、専門外の人々に自分が面白いと思うものを布教したい気持ちが強かったからアウトリーチを始めた。愛が持たれていない分野は自然淘汰されると思う。
A. アウトリーチが評価される空気を醸成していきたい。

Q. どのような研究者がアウトリーチ向きか
A. 一般向けの文章が書ける人。アカデミアと社会を分断しないバランス感覚が必要。
A. 研究者本人が面白い人かどうか。
A. 〆切が増えることを考えると1日にたくさん書くのが好きな人。

Q. どう炎上やクソリプに対応しているのか
A. (クソリプラーをブロックすることなく真面目に対応することについて)相手に伝わるかではなく、TLを見ている学生に「やな事言われたら言い返していいんだ」と伝えるため、あえてまともに反応している。「反論することは寧ろカッコいいじゃん」という空気を作りたい。
A. そもそも意見を表明するタイプのツイートをしないようにする。ブログ記事については間接的批判はありうるが、直接リプは少ないのでスルーできるしスルーする。

Q. アカデミズムは「バズ」とどう関係すべきか
A. 人々が関心を持っていることがバズるわけで、アカデミズムは「バズ」トピックについて学会をやるべき。テレビが生んだバズについても、学会がすぐにセミナーや雑誌の特集を組むのが望ましい。ただ学会に「目利き」がいないとこれらは実現しえない。
(例)TOKIOを知らないとTOKIOが発端のバズはアカデミックなことであれ学問に繋げ得ない
A. とはいえ若手が以上の活動を大きな学会に提案するのは難しい。オンライン上に流行に聡い研究者が集まれる場があればいいのだが。
A. ウェブ媒体で記事にすること自体がバズのフォローである。ウェブでは同じことが繰り返し議論される傾向があるので、ウェブ記事が何度も参照されるストックとして機能しうる。

Q. 意図した層とは違うファン(ノイジーマイノリティなど)が発生して、その結果、優良なファンがいなくなってしまうこともありえると思う。セルフブランディングって成功しているか?
A. ターゲッティング自体に違和感ある。ターゲティングをすると内輪になりやすい。それよりかは訳が分からない人がいた方がよい。今の社会の問題が内輪化にあるので、もっとマスに届いて欲しいと考えている。
A. >ファンが欲しくてやってるわけではない。強いて言えば高校生や学生に見てもらいたい。女性研究者にたいし、顔が出たとたんに猥褻な画像を送ってくる人がいるが、それはセキュリティ案件にするしかない。

Q. 自ら主体的に発信してこなかったSNS初心者へのアドバイスもお願いしたい。
A. 全員がSNSでアウトリーチを行う必要はない。書いた論文を再利用可能な形でウェブに出すだけで十分意義がある。利用可能な形でウェブ上に論文があれば、他人がそれを拾って記事を書くことも出来る。また、ciniiから論文本体が手に入れば編集者がそれをもとに記事依頼を送ることもできる。
A. 編集者にはウォッチャーが多い。専門書と現代社会の繋がりを示すような読書日記やツイートがきっかけでアウトリーチが生まれることもある。
A. 数人グループでのアウトリーチも可能。得意分野によるタスクの分担ができる、個人の見解を相対化したうえで発信することも可能。

参加者の反応

最後に、参加者の皆さんのご意見・ご感想を紹介したいと思います!
まずはアンケート結果から↓

・北村先生がきっかけで文学研究に関心をもち、映画や演劇を批評する楽しさを知った。もともと海外作品の需要層を広げ日本に紹介される作品が増やすことに関心があったため、今回アウトリーチについてお話を拝聴出来て良かった。
・おそらく自分より10~15才若い研究者・出版関係者が、自分とは異なる情報空間のなかで何を考えどんなことをしているのか具体的に分かったのが非常に面白かった。自分が大学院生だった頃よりもアカデミアは社会に近く、いままでに様々な試みがあったのだろう、と実感することができた。一方、炎上への(過剰な)危機意識の高さも感じた。昔は炎上してナンボくらいだったような気がする。
・今回のイベントを通じてアウトリーチのノウハウや心構えなどを学ぶことが出来、非常にためになった。特に、研究者と編集者の2つ立場から話を聞けたのが良かった。このイベントの続編があれば是非参加したい。ライブ配信などでもっと公開されるといい。
・とても刺激的で勉強になり楽しかった。アカデミアと一般をつなぐ、まさに今問われているアクチュアルなテーマでとてもわくわくした。また、活発なディスカッションが出来てよかった。時間配分なども含めとても纏まりが良かった。
・自己流でアウトリーチを行うと独善的になりがちで、炎上のリスクも大きい。今回、第一人者の先生方からノウハウを伺えたのが良かった(特に教員として安心した)。個人的には丸尾氏が仰るところの「覚悟」を持つのに疲れた節がある。
・アウトリーチ自体について多角的に考えることが出来て良かった。
・なかには慎重な発言もあったが、若い人に手放しで勧められるのかが気になった。主張や議論が粗くなりがちなので、専門家としての評価が定まらないうちはリスクもあるのではないか。

今回、「#バズるアウトリーチ」のハッシュタグをつけて、Twitter上でも皆さんからご意見を頂戴しました。
そのツイートをTogetterの方にまとめています。そちらも是非ご覧ください!
https://togetter.com/li/1379599

おわりに

IMG20190722205917
文系学問への風当たり、社会との溝、情報化社会に埋もれる良質な知、ベテラン研究者との世代間ギャップ…こうしたことへの危機感から、アウトリーチの意義や学術の社会への繋ぎ方を考える場を若手主導で設けたいと、今回のイベントを企画しました。
単に「文科省が推奨するからやる」のではなく、「先輩方に牽制されるからやらない」のでもなく、まず自分たちで考えなくてはならないだろうと。

今回のイベントを通じて、登壇者のお三方からフロアの皆さんまで、たくさんの方々から多様な意見を聞くことができ、企画者自身としましては、今後の活動のヴィジョンを以前よりずっと明確にできたと思っています。ご参加くださった皆さん・今これを読んでくださっている皆さんもそうであれば、企画者として嬉しい限りです。

また、上記の通り企画の動機は危機感によるものでしたが、皆さんの意見を聞く中で、自分の意見を主張したい、専門を活かしたい、好きで究めてきたものを知ってほしいといった純粋でポジティヴな意欲の大切さにも改めて気づかされました。
自分も楽しく受け手も楽しい――そんな理想的なアウトリーチの形を目指したいものです。

ありがたいことに、第2弾を期待する声もちらほらいただいています。
今回のイベントでは、質の問題についてあまり掘り下げられなかったと思うので、それについてやるのが一つかなと思っています。
丸尾さんの講演でも触れられていた、情報を「残念なもの」にしない努力や、アンケートにもあらわれている、若手の未熟さからくる質への懸念については、こういったイベントの場でこそ深く検討すべき点だと思います。
他にも、テーマや登壇者について希望があれば、是非運営委員までお聞かせください!

最後になりましたが、今回の登壇依頼を快く引き受けてくださり、有益な情報を提供してくださった登壇者のお三方、平日にも関わらず会場まで足を運び、活発に議論してくださった参加者の皆さま、円滑な運営をサポートしてくださったHistorians’ Workshop内外の全ての方々に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました!

文責:吉田瞳・中辻柚珠

史料読解ワークショップ開催レポート②

*こちらは史料読解ワークショップ開催レポートの後編です。前編はこちら。

大学院生対談 —史料読解ワークショップに参加して—

◇問題意識と参加のきっかけ

中山:ワークショップを企画し、当日の司会を務めさせていただきました、東京女子大学修士に在籍している中山恵と申します。ドイツ近現代史の中でも、ヴァイマール共和国時代の戦死者記念について研究しています。ワークショップの企画をした動機は、学部時代、卒論を書くまでに、史料を実際に読んでみたり読み方を学んだり考えたりする機会がなかなかなかったことに気付き、これから修論を書くに当たって勉強したいと考えたからです。個人的に、ぜひ藤野裕子先生と小野寺拓也先生から史料に関するお話を伺いたくて、ワークショップへの登壇をご依頼したところ、ご快諾いただき企画が実現しました。

今回はワークショップを振り返るために、記事の執筆にも協力をいただいた同じく大学院生の浅井さんと奥田さんをお招きして対談の場を持ちました。本日の対談はちょうどワークショップ開催から1か月後となりましたね。それではまず、お二人にワークショップに参加した動機を伺いたいです。

Continue reading “史料読解ワークショップ開催レポート②”