【ビデオ公開:レクチャー編】Self Care and Peer Support Workshop

歴史家ワークショップでは、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの大学院生・研究者が、今まで通りに研究を遂行することが物理的・精神的に難しい状況下において、研究上の悩みを共有できる場、セルフケアやピアサポートを通じたストレスコーピングの方法についてのワークショップ開催を求める声を受け、2020年6月25日に「Self-Care and Peer Support Workshop」を開催しました。

当日は、グリーフケアを専門とする一般社団法人リヴオンより尾角光美氏と水口陽子氏を講師として迎え、レクチャーとグループワークという2部構成のワークショップでした。
(開催内容の詳細はこちら!)

前半のレクチャー部分をより多くの方々にお届けできるよう、ビデオ公開することにしました。(プライバシーへの配慮の観点から、参加者のお顔にモザイク加工をさせていただいております旨、ご了承ください。)

いまなお、新型コロナウイルス流行終息の出口が見えず、先が見えにくい状況であることに変わりはありませんが、このような状況下であるからこそ、いつも以上に、自身の心・身体を大切にしながら、日々の生活・研究活動を続けていくための「ちょっとした術(姿勢やスキル)」を、今回のワークショップのレクチャー編(以下のビデオ)からお持ち帰りいただき、ご活用いただけましたら幸いです。

▼「セルフケア」についてと『ピアサポート』

なお、歴史家ワークショップでは、本イベントの趣旨を汲んだ「ピアサポート・プロジェクト」も行っています。ご関心のある方は、ぜひお気軽にそちらの場もご活用ください。

Coffee Time Series第1回第2回、第3回:2020年12月11日開催予定)


(企画担当:藤田風花、紺野奈央)

【開催レポート】Self Care and Peer Support Workshop (2020年6月25日開催)

2020年6月25日(木)に「セルフケア・ピアサポートワークショップ」がオンラインで開催されました。企画運営を担当した藤田風花さんによる本イベントのレポートを以下に掲載いたします。

【開催趣旨】

歴史家ワークショップはこれまでにも英文校閲WSやCoffee Time Seriesなど、「ピアサポート」、すなわち研究対象や方法論の違いを超えて研究者たちが仲間同士を支え合う水平関係でのサポートを実践してきました。本企画はより根本的なレベルに立ち返り、「そもそもピアサポートとは何か」について考えるためのイベントとして開催されました。

これまで、研究や教育活動に携わるなかで悩みが生じたとき、多くの人が「自己流」で対処してきたのではないかと思います。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、研究仲間や同僚との対面でのコミュニケーションの機会が失われたこと、さらに日常生活と研究活動との切り替えや、留学や史料調査の予定変更とキャリアへの影響、オンライン講義の受講や準備にたいする疲労等の新たな問題にも向き合わざるをえない状況が続いています。

そのような状況において、今回の企画は実際に歴史研究に携わっている方々から寄せられたセルフケアについてのイベントを希望する声から出発し、歴史家ワークショップとしては「セルフケア」に主眼をおいた初めての試みとなりました。いま一度セルフケアについての基本的な知識を得ることから始め、それを実践に繋げるというプロセスを体験する場として、レクチャーとワークショップの二部構成で実施されました。グリーフケアを専門とする一般社団法人リヴオンの尾角光美氏と水口陽子氏を講師に迎え、歴史家ワークショップ事務局の紺野奈央と京都大学大学院文学研究科博士後期課程の藤田風花が企画運営・進行を務めました。

【第一部】レクチャー「セルフケア実践につながる姿勢とスキルを学ぶ」

55名が参加した第一部では、まずセルフケアについての基礎的知識のレクチャーがおこなわれたのち、自分自身の現在の状態を俯瞰的に見るためのいくつかのスキルが紹介されました。ミニワークが取り入れられ、Zoomのチャット機能を活用して講師と参加者とのリアルタイムでのやりとりが講義と並行しておこなわれるなど、双方向的な要素が盛り込まれていました。教わったスキルをその場で実践し、効果を実感することは、参加者それぞれがセルフケアのスキルを自分のものとしていくうえで有意義なプロセスであると感じました。また、セルフケアについてさらに専門的な内容を知りたい人のために、参考文献もいくつか紹介されました。

レクチャーの後半では、セルフケアの実践に焦点があてられ、「ピアサポート」の意義と実践方法について説明されました。続いて、本イベントに集った参加者のピアの力を活かすことのできる実践方法として「当事者ミーティング」の手法が紹介されました。

【第二部】ワークショップ「当事者ミーティングの体験を通じピアサポートにふれる」

休憩を挟んで再開された第二部には20名が参加し、第一部のレクチャーで紹介された「当事者ミーティング」を実際に体験することに主眼がおかれました。はじめに、尾角氏のファシリテーションのもと、紺野と藤田、そして本企画有志の市川佳世子・安平弦司・吉川弘晃を加えた6名でデモンストレーションをおこないました。

その後、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使用して参加者全体が5つのグループに分かれ、「当事者ミーティング」を体験しました。各グループでは、上記6名と水口氏、森江健斗が進行役を務め、グラフィック・ファシリテーションの手法をもちいて話し合いの内容を可視化しました。まず、参加者に「現在気になっている・困っていること」や「実現したいこと」をいくつか書き出してもらい、時間の制約上そのなかから1つを取り上げ、グループ全体で共有しました。次に、悩みを共有してくれた参加者に、具体的な質問を投げかけることで、その悩みの背景を掘り下げました。続いて今度は悩みを共有してくれた参加者は聞き役に徹し、他の参加者がその悩みの解決に向けて思いつくかぎりのアイデアを出していきました。ここでは、議論を戦わせたりアイデアに優劣をつけたりすることは求められません。というのは、自分の共有した悩みの解決方法についてのアイデア出しを黙って聞いている参加者が、心のなかで自分自身が取り入れられそうなものだけを持ち帰ればよい、とされているからです。

グループワークを終えて全体のルームに戻ってきたのち、参加者全員が感想を述べて第二部は終了しました。「自分の悩みが自分以外の人たちで話し合われることで悩みを客観視できた」、「システマティックに時間を区切って行われたので、悩み相談にありがちな『だらだら続いて疲弊する』ということがなくよかった」「『ピア』の力を実感した」などの声があり、参加者が「当事者ミーティング」を楽しんだ様子が印象的でした。

【参加者の声】

・ピアサポートにおける「ルール」や「方法論」がわかり、何に気をつけたらいいのかわかったのがよかった。(修士課程、レクチャー・ワークショップ両方に参加)

・レクチャー内での質問に回答し共有することで、自分の問題や抱えていることに気づくという点ではセルフケアの手助けになった。自分だけの問題ならカウンセラーに相談するのはできるが、ほかの人の問題も共有し、お互いに悩みや思いを聞くことができたのがよかった。(修士課程、レクチャーのみ参加)

・専門家でなくても、ピアでできる支援を体験できたことは貴重な機会でした。また、そこで出てくる結論だけでなく、グループワークを行う過程で見えてくることもあり、それ自体がとても良い体験でした。(ポスドク、レクチャー・ワークショップ両方に参加)

・オンラインという制約がある以上いっても仕方がないことではあるのですが、やはりこうしたワークショップはぜひとも対面でやりたいなと思いました。ワークショップそのものについては、研究者という同じ立場の方々の悩みについて、自分ならどうするか、相手の悩みの解決のためにどうするかを能動的に考えるなかで、自分の中で燻ぶっていた悩みについても客観的に考えることができたので、得られるものも多く、とても面白かったです。(博士後期課程、レクチャー・ワークショップ両方に参加)

【おわりに】

欧米の大学では重視されているものの日本ではあまり馴染みのないピアサポートですが、今回のイベントを通じて、そのようなサポートを望んでいる人が多く存在するということを強く感じました。参加者の皆さんからは「当事者ミーティング」をあらためて実施する機会を希望する声を多くいただいているので、将来的にまた「当事者ミーティング」にフォーカスしたピアサポートの場を用意できればと思います。

イベントの最後に、尾角氏が「歴史家ワークショップとイベントへの参加をとおしてそれにかかわる人々の集まりは、潜在的にピアの力が非常に強いコミュニティである」とおっしゃったことが、とても印象的でした。個人レベルでのセルフケアを大切にしつつ、コミュニティレベルでピアの力を最大限に活用することができれば、アカデミアの「基礎体力」を向上させることにもつながるのではないかと感じています。本イベントで紹介・実践した「当事者ミーティング」を、参加者の皆さんがアカデミアにおけるピアサポートの有効な実践方法として受け止めてくださっていれば、大変嬉しく思います。

最後になりましたが、詳細なレクチャーとリラックスした雰囲気づくりをしてくださったリヴオンのお二方、双方向的なやりとりを可能にしてくださった参加者の皆さま、そして本企画の運営をサポートしてくださったすべての方々に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

文責・藤田風花

【参加者募集】Self Care & Peer Support Workshop(6/25 thu 16:30-19:45)

歴史家ワークショップでは、6月25日(木)に、「セルフケア・ピアサポートWS」をオンラインで開催いたします。

コロナの影響により、多くの大学院生・研究者が、今まで通りに研究を遂行することが物理的・精神的に難しい状況に置かれています。歴史家ワークショップにも、このような状況下における研究上の悩みを共有できる場、セルフケアやピアサポートを通じたストレスコーピングの方法についてのワークショップ開催を求める声が寄せられました。

歴史家ワークショップはアカデミアにおけるピアサポートを普段から重視してきましたが、今までそのスキルや仕組みをテーマにした話し合いや研修の機会を持つことはなかなかできていませんでした。他方、海外の大学ではリサーチ・スキルの一環としてピアサポートやセルフ・メンタリングのセミナーが大学院生や若手研究者のために開催されています(Silent Coaching, Active Listening, Action Learning Setなど)。

今回はグリーフケアを専門とする一般社団法人 リヴオンより、尾角光美氏と水口陽子氏を講師にお迎えします。レクチャーでは、セルフケアにおいて重要なスキルと、スキルを実践していくための土台としてのセルフケアの概念や「自分自身を大事にする」というあり方や価値観について学ぶこと。また、ワークショップ(グループワーク)による体験を通じて、自分自身のセルフケアを再定義することを目指します。

歴史家ワークショップにとっても、初めての試みとなるトピックとなりますが、「自分を大切にしながら」研究を続けるためのノウハウとスキルを、各自持ち帰っていただく時間となりましたら幸いです。

ご興味のある方は、ぜひ奮ってご参加ください!

開催概要

対象|歴史学研究や歴史家ワークショップに関わる大学院生・研究者
費用|無料
場所|オンライン開催(Zoom使用)
言語|日本語

内容
【第1部 レクチャー:16:30-18:00】 
セルフケア実践につながる姿勢とスキルを学ぶ

「自分をどう扱っているのか」を問うところからはじめます。セルフケアの概念・あり方・スキル、ピアサポート(※1)について、レクチャー形式で学びます。

【第2部 ワークショップ(グループワーク):18:15-19:45】
 “当事者ミーティング”の体験を通じたピアサポートにふれる

専門家が入らなくても当事者同士で課題解決方法や実現したいこと・あり方への「次の一歩」を見つけることを目的とし、「当事者ミーティング(※2)」というピアサポートのプログラムを実際に体験することで学ぶワークショップ(グループワーク)です。

※1 ピアサポート:一言では「仲間による支援」のことを指す。近い経験をした者同士や、同様の立場の人たちが支え合ったり、力づけあうこと(エンパワメント)を意味する。

※2 当事者ミーティング:専門家が入らなくても、近い立場にある当事者の間で課題解決や、実現したいことに対して自分が具体的に取り組める「次の一歩」を見つけられる対話型ワークショップ。

講師プロフィール

◆尾角 光美(おかく てるみ)一般社団法人 リヴオン代表理事
19歳で母を自殺により亡くし、2009年にリヴオンを設立し活動してきた。著書に『なくしたものとつながる生き方』(サンマーク出版)。国際比較社会政策学修士。

◆水口 陽子(みずぐち ようこ)一般社団法人 リヴオン理事
2012年に夫を事故で亡くした事をきっかけにリヴオンと出会う。現在全国の自治体、学校、仏教教団における講演や研修、担い手の養成事業等を担当。

参加登録

以下のリンクからお願いいたします。
「セルフケア・ピアサポートWS」参加登録フォーム

なお、参加には二つの方法があります。登録フォーム内にてお選びください。

  • 【第1部:レクチャー】+【第2部:ピアサポート実践のためのワークショップ(グループワーク】両方参加(定員:25名)
    残枠 5名となりました!6月22日(月)までの締切となっています。
      先着順となりますので、お早めにお申込ください。
  • 【第1部:レクチャー】のみの参加(定員:100名)
    ⇒ こちらについては、締切を設けませんが、先着順となります。
    定員となりました場合、ご希望に添えない場合があります旨、ご了承ください。

参加に必要なものについて
お申込いただいた方には、事前に当日資料とZoomリンクを、ご登録いただいたメールアドレスにお送りします。

お問い合わせ
歴史家ワークショップ(担当:紺野・藤田)
rekishika.workshop@gmail.com