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【開催告知】日本史史料英訳ワークショップ第五回「琉球外国関係文書の回」

趣旨説明

日本史史料英訳ワークショップ第五回、「琉球外国関係文書の回」を3月11日(木)に開催します。

中世近代に続き、第五回となる今回は、日本近世史専門の三名の方をお招きします。幕末史専門の後藤敦史氏(京都橘大学)と近世琉球史専門のトラビス・サイフマン氏(東京大学史料編纂所)から、「琉球外国関係文書」所収の阿部正弘「琉球の儀に付応接方大意」という史料の英訳に基づきつつ、近世日本の対外関係と関わる研究史の問題をお話しいただきます。そのうえで、日本近世外交史の視点から、松方冬子氏(東京大学史料編纂所)にコメントしていただきます。

これまでの四回のワークショップでは、日本と英語圏の異なる文化と歴史背景や、一つの史料用語の多面性・多様性により、日本史の史料用語について「完璧な」英語の訳語を見出すのは極めて困難である、という共通了解を育んできました。そこで今回の「琉球外国関係文書の回」では、語句レベルでの訳語の検討を踏まえつつ、そこから一歩進み、日本史史料の英訳がどのように関連研究史の問題に繋がっていくかを模索します。また、スピーカーのトラビス・サイフマン氏には、ご自身が携わっている東京大学史料編纂所での維新史料綱要データベースの英訳プロジェクトについても経験と知見をお話しいただき、既存の綱要英語版データベースを紹介する機会ともしたいと考えています。

開催概要

対象|歴史学、文学、言語学、翻訳学分野を中心とする研究者
費用|無料
使用言語|日本語
場所|オンライン開催(Zoom使用)
日時|2021年3月11日(木)9:30~11:40(日本時間)
検討史料|「琉球外国関係文書」(東京大学史料編纂所所蔵『島津家文書』所収)

スピーカー①:
トラビス・サイフマン(東京大学史料編纂所)
・維新史料綱要と英語圏での利用
・英語圏におけるペリーの琉球訪問研究: 阿部正弘「琉球の儀に付応接方大意」の英訳から

スピーカー②:
後藤敦史(京都橘大学)
幕末日本の対外関係:琉球とアメリカに関わる史料を中心に

コメンテーター:
松方冬子(東京大学史料編纂所)
「日本」とは何か

企画・司会: 黄霄龍(東京大学)

参加申込はこちら(https://forms.gle/KWAL6Thx8D1xsktg6)から。締め切りは日本時間の3月9日(火)正午。参加者には9日の夕方頃に史料の現代語訳と英訳を配り、zoomのリンクを案内いたします。

問い合わせ先:黄霄龍 hxiaolong[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp

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【開催報告】特別ワークショップ「仕事の効率化とワークライフバランス」@第70回日本西洋史学会大会

趣旨説明・概要

去る2020年12月12日(土)、第70回日本西洋史学会大会において、特別ワークショップ「仕事の効率化とワークライフバランス」が開催されました。歴史家ワークショップはこれまで、日本西洋史学会でさまざまなワークショップを実施してきましたが、その中で明らかになってきたのは、多くの研究者が「新しいことを始める余裕がない」という思いを抱えている点です。生活費を確保するためのアルバイトや授業、大学業務、学会の運営、あるいは子育てや親の介護に追われ、充分な研究時間を確保できなかったり、ついには研究者としてのキャリアそのものを断念せざるを得ない事態が生じたりしているのです。

こうした研究者のワークライフバランスをめぐる問題は、これまで個人の努力で解決されるべきものと考えられてきましたが、より多くの人々で議論・課題の共有を行なう意義もあるはずです。その議論を喚起すべく、今回のワークショップでは、企画立案者でファシリテーターを務める春日あゆか氏、コメンテーターとして柳原伸洋氏、金澤周作氏にご発言いただき、その後フロアからも積極的にコメントを出していただくことで、研究者のワークライフバランスについて議論し、問題意識を共有することを目指しました。

春日・柳原・金澤氏による報告

まずは春日氏が、自身の工夫について報告しました。こうした工夫を行なうようになったきっかけは、常勤教員として働き始めるにあたり、将来さらに忙しくなることを見据えて仕事を効率化したいと考えたことでした。そして、Excelを用いた労働時間の記録・可視化や院生・学生の積極的な雇用、授業準備の工夫などの試行錯誤を続け、研究時間の確保に関しては一定の成果を挙げているとのことでした。

つぎに柳原氏の報告では、そもそも「ワークライフバランスとは何か」という問題に立ち戻り、個々人だけでなく家族のワークとライフも関わってくるため、これを達成するのはかなり難しいのではないかという指摘がなされました。また柳原氏は、ご自身の仕事の「効率化」に向けた工夫を紹介する一方で、行き過ぎた「効率化」には警鐘を鳴らしました。「効率化」とはあくまで研究時間を確保するための手段に過ぎず、人間関係や学問を行なううえで効率を追求することが誠実といえるかどうか、という問題が提起されました。

最後の金澤氏の報告では、個人のワークライフバランスと学界全体との関係性が論じられました。ワークライフバランスを達成するためには、それぞれの願望を阻害する現状の課題について、個々人で対応するしかない。しかし、類似した課題を抱える人々でそれらを共有・特定したり、他者の課題に共感することはできる。一方で金澤氏は、個人にとっての心地よさやメリットを追求しすぎると、学界が機能しなくなることも指摘されました。学術雑誌の発行や学会の開催など、学界の維持に重要であるが評価されにくい仕事はいくらでもある。誰かがそれを担っているという理解と、自らがそれを担ってもよいという意欲を持たなければならず、ワークライフバランスを実現するためには、自他の課題を認識し、それぞれの事情に理解を示しながら協働できるような、学界の「メンテナンス」が必要である、という考えを述べられました。

フロアからのコメント

以上の三つの報告に対し、フロアからは様々なコメントが寄せられました。

例えば、仕事の効率化に関する内容です。これらのコメントからは、それぞれの職場や制度の中で皆さんが取り組まれている試行錯誤の現状が浮き彫りとなりました。また、そもそも仕事の効率化が必要ない環境を作るべきではないか、そのために大学・政府に制度改革を求めることが重要ではないかという指摘もなされました。これに対し柳原氏から、それぞれの組織・団体内で活動を続けること(他の団体がやっているからといって途中で止めないこと)が重要だというコメントがありました。

研究者の立場とワークライフバランスについて、とくに専業非常勤講師の現状に注目すべきという声もありました。非常勤講師は、任期や給与等の点でワークライフバランスの達成が極めて困難である。ゆえに、非常勤講師が置かれている状況を注視し、改善に向けた動きをとることが必要ではないかという提起がなされました。

さらに、研究者の人間関係に関するコメントも寄せられました。とくにこのコロナ禍で、今まであった人間関係が断絶したり、新たに人間関係を作ることが難しく、孤独な環境に置かれている。これについては自ら積極的に「場」を作ろうとする動きが大切だということで、春日氏から、オンラインを利用して集まり、一定の時間内で各自がそれぞれの作業を行なう「オンライン・グループ」の事例が紹介されました。

参加者の意見(アンケート結果より)

【得られたこと】

  • ワークライフバランスについて、皆なにがしかの悩みを抱えていることを共有できたこと自体が、今後を考えるうえで重要な一歩。
  • 世代によって、社会的あるいは経済的な立場によって直面している問題はそれぞれだが、このような問題を共有できたこと自体を嬉しく思う。
  • Excelを使った時間の見える化、時間を決めて図書館に通うといった実践例が参考になった。
  • ワークバランスをいろいろな組織が継続していくことの大切さ、非常勤雇用の不安定さや男女格差の問題など、いろいろな問題を学会の場でオープンにできた。

【もっと知りたかったこと、不足していると感じたこと】

  • 場作りを大切にするなら、パネリストに大学院生や研究員、非常勤講師もいると良かった。違う立場の人が同じ舞台で話せるイベントができたらそれ自体にとても意義があり、立場の弱い人の励みになると思う。
  • 各人がさまざまな事情を抱え、夕刻という開催時間を考えても、事前アンケートによりあらかじめ一定程度の意見集約を行なうほうがよかった。
  • 個々の愚痴と現状への対処法について、もっといろいろ吐き出して問題を共有したい。
  • 西洋史という領域に特有の現状認識と、それに由来する困難や解決の可能性について話すことも有益だろうと思う。

まとめ

今回のワークショップは、18-19時という時間帯にもかかわらず92名という多くの方にご参加いただき、それぞれの抱える課題について、議論・共有することができました。また、コロナ禍というこの厳しい状況において、第70回日本西洋史学会大会を運営され、特別ワークショップの開催を許可・支援していただいた大会準備委員会の皆さまに、心から御礼申し上げます。

今後も各種イベントの開催を続けていきたいと思いますので、アイデアがおありの方は、運営委員あるいは当HPのコンタクトフォームにてご連絡ください。

執筆:北川涼太(広島大学・博士課程後期)