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ラウンドテーブル・ディスカッション「西洋古代史・中東史研究の国際化にむけて」開催報告

17FebRoundtablediscusion
会場のようす

2020年2月17日に「西洋古代史・中東史研究の国際化にむけて」を開催しました。カナダ・トロント大学の2人の研究者、キャサリン・ブルーアン氏(古代ローマ史・エジプト史)とギリシュ・ダスワニ氏(ガーナをフィールドとする人類学)に対して、熊倉和歌子氏(東京外国語大学・エジプト中近世史)と歴史家ワークショップ運営委員の高橋亮介が自らの経験を語りつつ質問を投げかけ、それへの応答、さらにフロアからの発言を交え、西洋古代史・前近代中東史の国際化の現状と問題点について話し合いました。

ケベック州出身でフランス語を母語とするブルーアン氏にとって、フランス留学は研究者としてのキャリアを積む上で必須であり、フランス語での書籍・論文の出版もしてきたが、アメリカでのパピルス学のサマーセミナーに参加したことで英語圏での人脈が広がり、英語での研究発表にシフトしていったとのことでした。さらにSNSでの英語による発信に対して想像以上の反響があり、講演に呼ばれる機会も増えたそうです。

ブルーアン氏の近年の研究発表は査読付きの学術雑誌への投稿ではなく、論集への寄稿が中心であるとのことです。氏が編者となる論文集への熊倉氏の寄稿も、共通の知り合いであるカナダ人研究者の紹介で実現したそうで、個人的なつながりの重要性が強調されました。

ギリシュ氏からは、査読誌への投稿の際には、その雑誌の性格や編集委員がどのような人であるかを研究する必要があること、また学術活動全般において、キャリアの早い段階や新しい環境に移った際には自分の有能さを証明することは必要であるかもしれないが、その後は他者との競争よりも共存・共生によって研究を盛り上げるべきであるとの指摘がありました。

他にも元来、西欧諸言語を研究発表に用いてきたパピルス学における英語使用の進展の状況、カナダの大学の英語圏の大学のなかでの位置づけなどについて議論が交わされました。

特定の研究分野を念頭においた企画でしたが、いくつかの話題は歴史研究のあり方全般にも及ぶものとなりました。現在の学術活動には解決の難しい構造的な困難や権力関係があることも確認されましたが、そのような問題に自覚的であり続けることが必要だと感じさせるイベントとなりました。